2001年12月8日(土)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ

(大要)


 日本共産党の志位委員長が、七日の議員団総会で行ったあいさつ(大要)は次の通りです。


同時テロ、報復戦争−−国際的働きかけ、九条守る両面での奮闘

 みなさん、ご苦労さまでした。閉会日にあたりまして、ごあいさつを申し上げます。(拍手)

 今度の国会というのは、同時多発テロと軍事報復という大きな国際的危機のただなかで開かれました。

 私たちはこの事態に対して、国際的な働きかけという点でも、憲法九条を守るたたかいという点でも、両面での奮闘をしました。その奮闘は全体として、非常に先駆的で、値うちが光ったと考えます。

 国際的な働きかけという点では、わが党は、二つの書簡を各国政府首脳にあてて送りました。それから、パキスタンに緒方靖夫参院議員を団長とする国会議員団の調査団を派遣しました。私は、これらは、今後に生きてくる大事な意義を持つものだと思います。

米軍の報復戦争はどういう事態をもたらしたか

 アフガンの情勢は、タリバンの支配が崩壊して、暫定政権の樹立に向かって動くという新しい局面に来ています。同時に、米軍などによる報復戦争がどういう事態をもたらしているのかということについて、私は二つの重大な問題を指摘しなければなりません。

罪なき民間人に多大な犠牲

 第一は、アフガンの罪なき民間の人々に多大な犠牲を強いたという点であります。この事実は消すことができません。そしてこれが新たな憎しみを生み出し、テロの新しい土壌をつくりだす危険を否定することもできません。

 きのう(六日)の東京新聞の夕刊をみていましたら、「クラスター不発弾、残る脅威」、「新生アフガンに“黄色い悪魔”」という記事が一面トップです。わが党の議員団も、この非人道的殺傷兵器について、大いに追及したわけでありますけれども、将来にわたってアフガンの国民に深刻な脅威をあたえ続ける事態をつくりだした。

 私は、どういう攻撃が行われ、どれだけの犠牲者が出ているのか、そのことについて、国際的にも厳しい究明が必要だと考えるものであります。

乱暴な論理に便乗――イスラエルの暴走

 第二の点は、“「テロへの対抗」といえばどのようなことでも許される”という危険を、国際政治に持ち込んでいるということです。

 一方で、米軍による戦争の大規模化、すなわちイラクをはじめとする他の国々に対して戦争を広げていくということが強く懸念されています。

 他方で、イスラエルの暴走ということが起こっています。イスラエル政府は、パレスチナの自治政府を「テロ支援団体」と決めつけて、直接の攻撃対象とするという重大な事態になっています。

 これは、アメリカのブッシュ大統領がとなえた乱暴な論理――“テロリストをかくまう者は同罪だ”――ここでかくまっているかどうかの「判定」はアメリカが一方的にするわけですが――、というこの乱暴な論理に便乗して、それにさらに輪をかけた無法そのものです。この間の和平にむけた努力を根本からくつがえす、こういう無法はただちにやめるべきだということを、強く求めるものです。

 情勢は、複雑さをはらんでおりますし、なかなか流動的ですけれども、私たちは、ひきつづき二つの書簡の基本的な見地、三中総決定の基本的な見地に立って、法と理性にもとづいてテロ根絶のための努力をすすめたい。同時に、「テロへの対抗」という名目で、国際政治に無法を持ち込むあらゆるくわだてにきっぱり反対を貫いてがんばりぬく、この態度を明らかにしておきたいと思います。(拍手)

歴史に汚点残した自衛隊参戦法、PKO法改悪の強行

 小泉内閣のこの問題での対応は、自衛隊参戦法の強行、PKO(国連平和維持活動)協力法の改悪という二つの憲法違反の法律を、この短い臨時国会で一気に通すという、歴史に汚点を残すものとなりました。

 私は、憲法九条がこんなに粗末に扱われているときはないと思います。じっさい、国会審議の状況もきわめて異常なものでした。過去の海外派兵法案の審議時間に比べても、いかにまともな審議ぬきか。それは審議時間を比べても歴然としています。九二年に通されたPKO法のときは、ともかくも百八十八時間の審議をやっていました。九九年のガイドライン法のときは、百五十九時間の審議をやっています。今回の参戦法はわずか五十九時間です。PKO法改悪にいたってはわずか二十二時間。まともな審議ぬきに、憲法違反の派兵法を一つの短い国会で二つも通す。こういう暴挙をやってのけました。

 私は、これをごり押しした政府・与党に、あらためてきびしく抗議をのべるとともに、こういう国会の運営を許したという点でも、海外派兵法にたいしてまともに対決する足場をもてなかった民主党の野党第一党としての責任もまた重大だと指摘しないわけにはいきません。

 この問題での首相の答弁を聞いていますと、結局、「憲法九条を日本がもっていることが恥ずかしい」ということが透けて見える答弁態度だったと思うのです。そこから、「日本の憲法は世界の常識からはずれている」という発言が出てみたり、「憲法九条と前文のすきまを狙ってこの法律をつくったんだ」という発言が出てみたり、憲法冒とくの発言がつぎからつぎへとでたわけです。まさにこういう態度こそ恥ずかしい態度です。

 私たちは、憲法九条は、「恥ずかしい」どころか、二十一世紀の日本が世界平和に貢献していくうえで、最大のわが国の財産であり、宝物であると確信するものです。このことは、わが党の代表団がパキスタンの現地にいったさいに、現地の人々が日本に対して親近感をもっている。その根本に憲法九条があり、「日本が戦争しない国である」という信頼感があったという、この事実が確認されたわけですけれども、ここからも明らかであります。

 憲法九条をめぐるたたかいは、今後いよいよ重要になってきます。海外派兵の即時中止、そして憲法九条擁護の一点での大同団結のために、引き続き力をつくしたい。この決意もあらためて申しのべたいと思います。(拍手)

「小泉改革」の行き詰まり、自己破たん明白に

 内政では、「小泉改革」の行き詰まりと自己破たんが非常に明りょうになりつつあると思います。わが党は、これが国民に耐えがたい痛みをおしつけ、日本経済を破局においこむ間違った道だということを批判してきましたけれども、それがいよいよ現実のものになってきたと思います。

 経済情勢のこのところの悪化は、本当に坂道を転げ落ちるようなありさまです。きょう(七日)発表になりましたけれども、今年の七月―九月期のGDP(国内総生産)は、実質で年率換算マイナス2・2%になるという数字で、二期連続マイナスとでました。それから、この臨時国会の会期中に完全失業率の統計が三度でたのですけれども、一回目が5・0%、二回目が5・3%、つい最近のものが5・4%と、回をおうごとに失業者が増える。ところが、それに対する首相のコメントは「構造改革が進んでいて、これは当然のことだ」という立場のものです。会社がつぶれても、「構造改革が進んでいるから、けっこうなことだ」という立場をとるひどいものです。

商業ジャーナリズムも「小泉改革の破たん」と特集

 私たちは、いまの事態を、「小泉大不況」だと、その責任を指弾してきましたけれども、読売新聞が連載の特集を組んでいます。「防げ 小泉デフレ」という連載です。そこでは、「国民生活を崩壊させる『小泉デフレ』は、絶対に阻止しなくてはならない」「日本経済が新たな危機の段階に突入した今、『構造改革なくして景気回復なし』という小泉内閣の論理はほぼ破たんしたと言える」とのべています。これはもちろん処方せんでは、わが党と立場が違うのですけれども、「小泉改革」なるものはもう破たんした、これではもうやっていけないということが、こういう別の角度からも聞こえてくるわけです。

 小泉内閣は、この間、失業、倒産、福祉切り捨てなどをひどくする政治を、国民に「いま痛みに耐えれば明日は良くなる」という論理で押しつけてきました。同時に、「税金の無駄づかいをやめる」などといって、これまでの自民党の「既得権益」にあたかも自分が切りこむかのようなポーズを一方でとっていました。これが、国民のみなさんにある一定の期待をもたらしたと思います。

 ところが、この間の政府・与党の対応をみますと、道路公団の決着をみましても、無駄な高速道路はつくりつづける。今度の第二次補正予算の内容をみても、景気回復には役に立たない従来型の公共事業の積み増しという政策をやろうとする。結局、浪費を温存して、国民には痛みを押しつけるだけの政治だという自民党政治の地金が明りょうに出てきました。

 私は、小泉内閣に日本経済を担う資格はないということが、はっきりしめされたと思います。

国民の痛み理解しない首相の発言

 私は、この間に二回ほど党首討論をやったのですけれども、そこで、この首相は国民の暮らしの痛みや苦しみということを本当に理解していないなということを痛感した、たいへん印象に残った答弁が二つありました。

 一つは、リストラ・労働時間のことを問題にしたときに、有給休暇について、「有給休暇をとれといっても働くのが好きでなかなかとらない人もいる」と、労働者に責任ありといわんばかりの発言がでました。

 もう一つ、一昨日(五日)の医療の問題の質疑のさいには、「医療費の負担を下げると、病気でもなんでもない人がお医者さんに殺到して困るんだ」というのがでました。およそこれは国民の暮らしの痛みや苦しみということをまったく理解しない、まったく関心をもたない人の発言ではないでしょうか。

 こういうもとで、小泉政治と正面から対決して、リストラに反対する、あるいは医療・社会保障の改悪に反対する、暮らしを守る私たち日本共産党の責務はいよいよ重大だと、このためにもがんばろうじゃないかということを呼びかけたいと思います。(拍手)

年末・年始にお互いに力をつくしたい二つのこと

 最後に年末・年始になりますが、われわれ議員団としてお互いに努力したいことを二点ほど申したいと思います。

論戦力をみがく努力をお互いに

 一つは、論戦力をみがく努力であります。こんどの国会で、全体としてわが議員団は大きな成果をあげたと思います。みなさんの奮闘にも、心から敬意を申し上げたいと思います。同時に、改善すべき点や、反省すべき点もあったと思います。

 やはり国民のみなさんに論戦を見ていただいて、「ああ、こういう党だったらもっと大きくしなきゃだめだな」とみなさんに思っていただけるような、そういう論戦力をみがくという点で、これはお互いに努力を重ねたい。閉会中というのは、そういう大事な期間でもありますから、このための力をつくしたいと思います。

「大運動」成功のために全党と心一つに奮闘しよう

 それからもう一点は、「大運動」の成功のために全党の同志とともに心を一つにして奮闘をしようではないかということです。「大運動」は十一月に前進の貴重な一歩を記しました。党員でも、機関紙でも大事な一歩ですが、まだこれは本当に最初の一歩です。

 十一月末に全国都道府県委員長会議を開きました。ここでは非常に多面的な経験交流がされ、奮闘いかんではこの「大運動」を成功させることができる、前進ができるという可能性がいきいきと実証される会議となり、その成果を生かした奮闘が十二月に広がっています。

 ぜひ、この運動を十二月、一月とまさに全党運動にしていく、末広がりの運動にしていく、そのために、中央と地方が双方向で学びあって、また励ましあってこの大事業を成功させていく必要があると思います。この点でも、われわれ国会議員団が、全党の先頭に立って奮闘しようではないか、そして、来年を新たな躍進の上げ潮にむかう年にしようではないかということを最後に誓い合って、ごあいさつといたします。(拍手)

 日本共産党の志位和夫委員長が、七日の議員団総会で行ったあいさつ(大要)は次のとおりです。