2001年12月6日(木)「しんぶん赤旗」

志位委員長の党首討論

医療問題

公共事業のムダ一掃し、社会保障に
手厚くすれば解決の道開かれる


 早期発見、早期治療という医療の基本とは逆の事態をさらにつくりだす――。五日の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長は、政府・与党の医療制度改悪について小泉純一郎首相に迫りました。党首討論の大要は次の通りです。


志位 「早期発見・早期治療は、国民の健康はもとより、医療費の合理的節減にとっても基本だ」

首相 「予防の上に早期発見・早期受診(は必要)」

 志位 私は、医療問題について質問します。

 医療の基本が、病気の早期発見、早期治療にあるということは、だれも否定されないことだと思います。

 この問題というのは、国民の健康と命を守るうえでも、医療費の合理的な節減にとっても、二重に重要だと私は思います。必要な受診を控え、治療あるいは検査が遅れれば、病気が重くなって本人が苦しいだけでなく、医療費も逆に増やしてしまうことになる。

 たとえばいま、国民健康保険は、どこでも赤字で大変です。その事業主体となっている市町村が出している市民への広報を、私は取り寄せて見てみたんですけれども、どこでも共通して訴えているのは、「早期発見、早期治療に努めよう」、こういうことであります。

 ここに愛知県春日井市の広報を持ってきましたけれども、ここでも「国保の医療費を大切に使うようにしましょう」。「医療費節減のため」にも、「早期発見、早期治療に努めましょう」。「体調の変化に気がついたら、がまんせずに早めに受診してください」。みんなこう書いてありますよ。

 まず私は、総理に基本的なご認識をうかがいたいんですが、この早期発見、早期治療、これは国民の健康にとってはもとより、医療費の合理的な節減にとっても、基本だと考えますが、いかがでしょうか。簡潔にお答えください。

 小泉 基本は健康三原則。それは何か。正しい食生活、適度の運動、十分な休養。そういう健康三原則のうえに、早期発見、早期受診。まず、日ごろから健康に気をつけよう。予防が病気治療より大事なんだということを、しっかり多くの国民のみなさんに理解してもらわなければいけない。食事をおろそかにしてはいけません。健康をつくるもとが食事なんです。

志位 「患者負担増で受診にブレーキがかかっているのが現実だ」

首相 「必要な受診は抑制しない」

志位 「現に病気で治療を受けられない人がいるではないか」

 志位 病気にならない努力はもちろん必要ですけれども、そのための予防も必要ですけれども、病気になったら早期発見、早期治療が大事だということをお認めになりました。しかし、現実は逆の事態が起こっているわけですよ。

 (パネルを示して)これをちょっとごらんになっていただきたいのですが、これは厚生省がおこなった国民生活基礎調査をパネルにしたものです。

 この赤い棒、これは病気の自覚症状を訴えている人――有訴者の割合です。青い棒は、実際にお医者さんにいっている人――通院者の割合であります。二十五歳から六十四歳の現役世代の数字です。これは旧厚生省の数字です。

 これを見ますと、有訴者の数は九二年、九五年、九八年、回を追うごとに増えています。九八年には30%になっています。

 ところが通院者の方は、九二年から九五年はだいたい平行に増えているんですけど、そのあとがくんと九八年になって減っています。

 何があったのか。九七年に小泉さんが厚生大臣のときにやった健保本人二割負担。これが、まさに受診にブレーキをかけている。早期発見、早期治療とは逆行する事態を現につくりだしている。一目りょう然です。

 私はこの問題について、全国からたくさんの訴えをいただきますけど、高血圧の方が、「治療代がなくて払いきれない、病院にいけない」。糖尿病の方が、「治療のインシュリンをもう続けられない」。大変切実ですよ。

 そのうえに、今度の政府・与党がやろうとしている方針が実行されたら、どういうことになるか。今度は健保自己負担は三割でしょう。お年寄りの自己負担も増やす。患者の自己負担を増やして、どうなりますか。(パネルを再度示し)こういう実態が現にあるわけですよ。

 まさに、受診率がまた抑制される。受診率が抑制されたら、国民的な規模での健康悪化が進む。そうなれば、ますます医療費も膨らんで、あなたがおっしゃる医療保険制度の継続的な維持ということもできなくなっていくじゃありませんか。

 高い保険料を払った上で、いざ病気になったときに重い患者負担を払わなきゃならない。結局、医療を受けられないというのでは、何のための保険かということになると思いますよ。

 私は、いまからでも方針を撤回すべきだと、患者負担増で受診を抑制するような政策は中止すべきだということをいいたいと思いますが、いかがですか。

 小泉 これは国民健康保険加入者はすでに三割負担なんですよ。そして今回、高齢者は一割を負担していただく。しかも、健保の方は将来、二割から三割に引き上げる方向でいま準備しておりますが、適正な負担はどうあるべきかということを考えてやるんです。

 確かに負担が低ければ低いほど、気軽にお医者さんにいけるといういい面もあります。同時に、何でもない人がお医者さん、病院に殺到しちゃって、本当に必要な治療が受けにくい面もある。そういう点もあるから、両面から必要な受診は抑制しない方法でどういういい方法があるか、適正負担、適正受診と両面、総合的に考えていただきたいと思います。

 志位 国保は三割(負担)というふうにおっしゃいましたけれど、三割でも重すぎる。それを下げるべきだといっているんです。

 それから、(パネルを再々度示し)現に病気があっても(治療を)受けられない人がいるわけですよ。やはり、公共事業のムダ遣いを削って、医療、社会保障に手厚い財政に切り替えるべきだ。これこそ解決の道だと申し上げて終わりにいたします。


病院にいけない“がまん率”3.8%
二百八十万人にものぼる

志位委員長の感想会見

 日本共産党の志位和夫委員長は五日、国会内で党首討論を終えての感想を記者団に求められ、「(病気の)早期発見、早期治療は、国民の健康を守る上でも、医療費の合理的な節減のうえでも、重要な一番の基本だと、小泉首相も認めた。しかし、患者負担増で、それとは相反する受診抑制をつくりだし、さらに広げるという根本矛盾には、首相はまともに答えられなかった」とのべました。

 志位氏は、党首討論で示した現役世代(二十五歳〜六十四歳)の「有訴者率」と「通院者率」のグラフについて、「厚生省の国民生活基礎調査のデータに基づき、九七年の医療改悪の影響がもろに出た現役世代について示したものだ」と説明。「有訴者率と通院者率のギャップ(開き)は、病気の自覚症状をもっていながら、病院に行かずに我慢している人の比率、“我慢率”だ。これまで1%程度だったのが、(九七年の医療改悪後)九八年には3・8%になり、約二百八十万人にあたる」と指摘しました。

 その上で、「政府は、必要な医療を抑制しているわけでないと説明してきたが、まさに必要な医療が抑制されている実態が厚生省の調査で出ている」と指摘。「今度の医療改悪をやった場合、通院者率はもっと下がることになり、非常に深刻な受診抑制がおこる。病院に行かず重症化し、医療費が増大するという悪循環に入っていくという非常に深刻な事態だ」とのべ、「この問題は、国民的にも非常に怒りと不安が強い問題で、大運動にしていきたい」とのべました。

 また、小泉首相が「何でもない人が病院に殺到して、必要な治療が受けにくい」などと答弁したことについて、「自覚症状を持っているのに、病院に行けない人がこれだけいる実態を無視した暴言だ」と批判しました。