2001年9月21日(金)「しんぶん赤旗」

軍事報復を無条件で唯一の道とする姿勢をあたらめよ

党首会談で 志位委員長が提起


 日本共産党の志位和夫委員長は二十日午前、首相官邸で開かれた小泉純一郎首相と野党の党首会談に出席し、アメリカでの同時多発テロ事件への日本政府の対応について、申し入れ文書を手渡し、日本共産党の見解を示しました。市田忠義書記局長が同席しました。

小泉首相、米国の武力報復の国際法上の根拠示せず

 このなかで小泉首相は、十九日発表した日本政府の対応方針について説明。これに対し、志位氏は、「卑劣なテロを世界から根絶しなければならないことは、国際社会と日本国民の強い総意であることはいうまでもない」と強調したうえで、「問題は、その目的を達成するうえでどういう手段が有効で、法と道理にかなっているかの選択の問題だ」と指摘しました。

 そして、問われているのは、軍事報復か、“法による裁き”か、どちらの道をとるかの選択だと述べ、「この選択の問題で率直に言って日本政府が主体的に判断した形跡がない。米軍の軍事報復を無条件の前提として、その枠のなかで、日本がどう協力するかの対応に終始する姿勢をあらためる必要がある」と提起しました。

 米軍の軍事報復活動に対して自衛隊が後方支援活動を行うなどとした政府の方針については、「憲法に違反することは明白」と批判。「ガイドライン法でさえ『周辺事態』に限られていた米軍支援の活動を、地球的規模に広げる新規立法などはきっぱり中止すべきだ」と求めました。

 席上、志位氏が、米軍の軍事報復活動の国際法上の根拠をただしたのに対し、小泉首相は「国連の法にもとづく裁きは重要な点だ。軍事行為の正当性についても十分な点検、配慮をしていく」と回答。志位氏がかさねて「国際法上の根拠について現時点での日本政府の認識をはっきり説明してほしい」と求めたのに対し、首相は「アメリカも判断するだろうし、国連も判断するだろう。それを見て日本政府も判断する」と述べるだけで、米軍の軍事報復の法的根拠について、なんの判断も認識ももっていないことが明らかになりました。

 会談では、志位氏が、野党の意見を節々で聞くため党首会談を開くよう提起したのに対し、小泉首相も「そういう場を設けていきたい」と述べました。

 小泉首相との党首会談で、民主党の鳩山由紀夫代表は、米軍の報復攻撃に備えて自衛隊を派遣するための新法について、「国内法だけでできないなら、新たな法整備に基本的に賛意を示す」と述べました。

 土井たか子社民党党首は、「(テロ根絶には)“法の裁き”ということをはっきりさせるべきだ」として、新規立法には反対の意向を表明。

 自由党の小沢一郎党首は、会談に出席しませんでした。


軍事的報復活動─国際法上の根拠をめぐって

志位委員長と小泉首相のやりとり(要旨)

 二十日の小泉純一郎首相と野党党首との会談で、日本共産党の志位和夫委員長は、同時多発テロ事件での日本政府の対応について申し入れをおこなったあと、小泉首相に、米国による軍事的報復活動についての国際法上の根拠についてただしました。首相とのあいだでつぎのようなやりとりがありました。

 志位 政府の方針は、「当面の措置」の第一として、「本件テロに関連して措置をとる米軍等」に対して、自衛隊が「輸送・補給等の支援活動」―兵たん活動をおこなうための「所要の措置を早急に講じる」と書いてある。ここでいわれている「本件テロに関連して措置をとる米軍等」というのは、報復の軍事活動をおこなう米軍などを意味することは明らかだと思う。

 そうであるならば、その国際法上の根拠はどこにあるのか。政府として、こういう方針を出した以上、その国際法上の根拠についての認識と判断をもっていて当然だと思うが、どうなのか。

 小泉 志位委員長のいわれる国連の法にもとづく裁きは重要な点だと思う。軍事行為の正当性についても十分な点検、配慮をしていきたい。

 志位 総理は「法にもとづく裁き」が重要だといわれた。そうであるならば、米国が軍事報復活動をおこなう法的根拠について、現時点で日本政府がどう認識しているか、はっきり説明していただきたい。

 われわれは、軍事的な報復活動の法的根拠はないと考えている。まず国連安保理決議一三六八についていえば、国連憲章第七章にもとづく軍事的強制措置についていっさい言及がなされていないし、個々の加盟国にたいして武力行使の権限をゆだねるような内容もいっさいのべられていない。ここにのべられているのは、法にもとづく裁きということだ。また、たとえ侵略に対する自衛であっても、軍事力による復仇(ふっきゅう)行為は国際法上禁止されているのはご存じだと思う(小泉首相うなずく)。どう認識しているのか、あらためて問う。

 小泉 まだ犯人も特定されていない。そこで、国連での審議をみて判断したい。

 志位 では、いまの段階では、日本政府として国際法上の根拠についての認識と判断はもっていないということか。

 小泉 これはアメリカが判断するだろう。国連も判断するだろう。それをみて日本政府も主体的に判断していく。

 志位 結局、現時点では日本政府として国際法上の認識も判断もいっさいないということではないか。テロを根絶するうえでどのような手段が有効で道理があるかについての選択の問題で、日本政府が主体的検討をおこなった形跡がないということが、こういうところにもあらわれている。米国が軍事報復の方針をすすめていることを、あたりまえのことのように無条件の前提にして、それにどう協力するかの対応に終始するというやり方を抜本的に見直すことを強く求めたい。




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