2001年9月7日(金)「しんぶん赤旗」

CS放送 朝日ニュースター

志位委員長語る

深刻な雇用と社会保障問題、特殊法人改革などについて


 日本共産党の志位和夫委員長は六日、CS放送の朝日ニュースターの「各党はいま」に出演し、深刻な雇用と社会保障、高祖議員派の選挙違反問題、特殊法人改革の問題について、清原政忠朝日新聞政治部記者の質問に答えました。

最悪の失業─大企業のリストラの横暴に反対し、雇用をまもる大きなたたかいを

 志位氏は冒頭、過去最悪の失業率と雇用について問われ、次のように述べました。

 志位 失業率5%というのはたいへんな最悪の数字ですけれども、じっさいの実態からしますと、きょう(五日)も内閣府の数字が出ていましたが、就職のための活動をやったけれどもなかなか見つからなくて、働く気持ちはあるんだけれどもあきらめてしまった方など、潜在的な失業者を含めますと10・4%という数字が出ていました。十人に一人が職を失っているという事態というのは、ほんとうに日本社会にとって深刻だと思います。

 そのうえで、いま重大視しなければならないと思うのは、こういう最悪の失業率のもとで、大企業がリストラの競争を始めているということです。読売新聞が、大企業三十社にアンケートをとったところ、その合計だけでも進行中のものも含めて十六万人の人員削減をやる(計画になっている)。ソニー、日立、東芝、日産自動車など、電機、自動車でのきなみ大量の人員削減計画です。

 それにくわえてNTTが分社化という形で、十一万人規模の大リストラをやろうという。たいへんな賃金カット、転籍を押しつけるというやり方でのリストラ計画です。

 こういう、大企業の経営者が、自分たちの目先のもうけのためだったら、労働者の雇用の問題についていっさい責任を負わないという、モラル破たんの状況がいま競い合って起こっているということは、どうしてもくいとめなければならない大問題です。私たちは、大きな国民的なたたかいが必要だと思っています。

「過剰」なのは労働時間─国連からもきびしい警告が

 雇用促進の具体策について問われた志位氏はこう述べました。

 志位 たとえば、よく、「雇用が過剰だからリストラはしようがない」といった議論がありますが、私たちは、労働時間こそが過剰だといっています。労働時間の短縮、とりわけただ働き――「サービス残業」をなくす。これに真剣にとりくんだら決して「雇用が過剰」ということにならない。この問題の解決に結びついてきます。

 私が最近、目にしたもので、国連経済・社会委員会という国連の組織が、八月三十一日に勧告書を出して、日本の労働条件の分析をやっているのですが、「委員会は、締約国(日本)が、公共・民間部門双方において過度の労働時間を許していることにたいし、深い懸念を表明する」ということをいって、日本にたいして「労働時間を削減するよう勧告する」としています。国連でも日本の労働時間は長すぎるということが問題になり、是正の勧告がされるような事態なのです。

 電機産業の大リストラが計画中ですが、ドイツと比較してみますと、ドイツの電機産業の労働時間は年間一千六百時間です。日本の場合、二千百時間で、年間五百時間も多いわけです。それに「サービス残業」がくわわっているわけですから、たいへんな労働時間が長い状態を、職場に残った人たちには押しつけるわけです。この問題を、賃下げなしの労働の分かち合い、あるいは「サービス残業」の根絶、こういう方向で解決していくことをやるべきです。

解雇の規制─ヨーロッパではたたかいのなかでルールをつくっていった

 臨時国会で「日本共産党として法制度の改正も含めて提案するか。どうとりくんでいくのか」との質問にこう答えました。

 志位 たたかいを大いにすすめていくということです。これはいまの枠内でも大いに可能です。たとえば、「サービス残業」というのは、労働基準法でも違法で、厚生労働省も根絶のための通達まで出したわけですから、大いに根絶のためのたたかいをやっていく必要がある。リストラについても、その不当な実態を明らかにして、たたかいを大いに繰り広げていきたいと思います。

 同時に、制度的な要求としては、リストラ・解雇を規制するルールということが大事ですね。

 ヨーロッパでは、EU(欧州連合)が六月に「一般労使協議指令」というリストラ・解雇規制のルールを理事会で決めているのです。

 九七年にベルギーのルノーの工場が、あのゴーンさんがやったやり方で一方的に閉鎖された。これはまったく労働者側に情報の提供すらされないで、一方的にやられました。これが大きな社会問題になりました。

 そして、たたかいが起こった。たとえばイギリスではBMWの子会社のローバーという自動車会社があるのですが、この閉鎖の動きがあって、八万人のデモが起こってこれを中止させるとか、各地でたたかいが起こった。

 そういうなかで(「EU指令」では)労働者の再配置に伴う大量解雇をやる場合には、事前に労働者に情報を伝えること、それから、協議を行うこと、その協議も一方的な通知ではなくて、協議によって「合意に達することを目的」とした協議をやるという、たいへん突っ込んだ内容のルールをつくっています。

 たたかいのなかでヨーロッパでもこういうルールをつくっているわけです。そういうリストラ・解雇を規制するルールを日本でもつくっていく必要がありますね。

 私たちは、解雇規制法というのをすでに国会に提出しています。これはたとえば、「整理解雇の四要件」という、いくつかの要件を満たさない場合には勝手に解雇できないという最高裁の判例があるのですが、現場ではそんなものはおかまいなしというばかりに無法でやっていますから、これを法律化することもふくめた解雇規制法というのを私たちは提案しています。

 いま、リストラをやったものが「褒められる」社会になっているわけです。これを後押ししているのが政府で、「産業再生法」をつくって、リストラをやって人減らしをやった企業にはご褒美(ほうび)に減税してあげましょう。それから、「会社分割法」をつくって、子会社をたくさんつくってリストラをしやすくする法律もつくってあげましょうと、いたれりつくせりでリストラの応援を政府が音頭をとってやってきた。

 その結果、経営者もモラル破たんに陥ってしまって、リストラ競争をやっている。これをくいとめる運動と国会でのたたかい、両面をやっていく必要があります。

老人保健の適用75歳引き上げの医療改悪─国民の命と健康にかかわる大問題

 社会保障について志位氏は次のように述べました。

 志位 社会保障の問題では前回の放送でも話をしたのですが、今度の予算で、お年寄りが増えることにともなう一兆円の社会保障の自然増のうち、政府は、三千億円を削るという方針でしょう。これはほとんどが医療で削られて、二千八百億円が医療で削られることになる。これは制度改悪なしにはできないことですから、たいへんなことが起こるし、大いにたたかおうじゃないかということを呼びかけたのですが、実際に具体的な形で出てきましたね。

 いまの老人保健制度が、七十歳から適用になっているのを七十五歳に引き上げる。つまり、七十歳から七十四歳までの方はいままでは老人保健制度の対象だったのが外されてしまう。

 ことし一月からお年寄りの医療費が定額制から一割定率制になって、それだけでもたいへんな受診抑制が起こっている。お金の心配で病院の敷居が高くなってしまうという事態が起こっています。これが七十五歳まで引き上げられたら、七十歳から七十四歳までの人にとっては医療費が二倍、三倍になります。こういう事態がいま進行しようとしているので、これはことしの秋から来年の予算にかけての大問題になりますね。

 私たちは、国民の命と健康にかかわる大問題として、これも大いにとりあげて、これをくいとめていくたたかいをやっていきたいと思います。

社会保障の財源─「公共事業偏重から社会保障重視」へ財界の研究機関も提言

 志位氏は、社会保障の問題に関連して財源について解明しました。

 志位 医療の問題で、大いにたたかいが必要だということについて、お話ししたのですけれども、そのさい、財源をどうするのかという問題が出てきます。

 私は、最近この問題で目にした材料で、ぜひ紹介したいことが二つほどあります。

 私たちは、こういう社会保障の財源問題を考える際に、公共事業に年間五十兆円、社会保障に二十兆円という、「逆立ち」をただすことが大事だということをずっといってきたのですけれども、六月十五日に住友生命総合研究所がリポートを出しまして、年間五十兆円の公共事業を段階的に半減するといっています。これは私たちといっしょなんですよ。半減して、「公共事業偏重から社会保障重視へ財政構造を根本的に改革することによって、国民のかかえる不安感を払拭(ふっしょく)し、景気回復を図る」という提言をズバッと出しているのです。

 提言を読みますと、いまの公共事業がいかに異常な肥大化をしているかを告発したうえで、だいたい十年ぐらいかけて、半減する。そのことで、税金のレベルで十六兆円ぐらいお金が出てくるので、それを社会保障にあてようじゃないかと。そうすれば、社会保障の安心がつくられて、将来の安心から景気にもプラスになるという提言なのです。もちろん、私たちとはいろいろと違う点もあるのだけれども、「逆立ち」財政を変えることが、いろいろな問題の解決のかぎだということを、財界のシンクタンクがいいだしたというのは、私は、非常に大事な点だと思うのです。

高すぎる薬価を欧米並みに下げ、財源生み出すとの政府審議会の提言も

 それから、もう一つ、私が最近の資料で面白く読んだのは、政府の産業構造審議会の新成長政策部会の「中間とりまとめ」という文書が七月二十四日に出ているのですが、そこに、医療の効率化をはかるうえで薬剤費の比率を、先進諸国なみに下げる、それで一兆四千五百億円の削減ができるという提言を出しているのです。

 これも、私たちがいってきたことと同じで、私たちは、「逆立ち」財政の転換とあわせて、社会保障のなかの浪費としては、日本の薬剤費の比率が多すぎる、医療費の24%も薬剤費がしめている、これを欧米なみにしたら、だいたいそれで一兆五千億円ぐらいのお金が出てくるということをいってきたのですけれども、政府の審議会も、薬代の削減で、だいたい同じぐらいの数字を出しているということは、非常に面白く読みました。

 私たちがずっといってきた「逆立ち」財政の転換、あるいは高すぎる薬価を適正なものにする、この主張が、かなり広く、多くの人々の共通の認識になっています。

 社会保障のたて直しというと、すぐに消費税を上げるという人もいるけれども、そうではなくて、きちんとした道理ある解決策というものがちゃんとあるということを、いま政治がしっかり明らかにして、国民のみなさんの将来の安心をほんとうに持っていただけるような制度をつくることがたいへん大事だと思います。

高祖議員派の選挙違反─知りながら黙認してきた小泉首相の責任は重大

 さらに志位氏は、自民党の高祖議員派の選挙違反事件について発言し、議員辞職や小泉首相の責任についてこう述べました。

 志位 高祖議員が辞職をすることは当然だということを、早くから私たちも主張しているのですが、この問題は、小泉首相自身の責任をはっきりさせる必要があると思うのです。つまり、自民党総裁としての責任、内閣総理大臣としての責任、二重に問われているわけです。

 この問題について、小泉さんの発言でまず出てきたのは、「私は憂慮していたのだけれども、それが現実のものになった」と、人ごとみたいな発言でした。

 しかし、「憂慮」していたというのなら、なぜ、それをくいとめるための手だてをとらなかったのかということは、自民党総裁の責任として問われるわけですよ。

 実際、小泉さんがお書きになった『郵政民営化論』というのを読むと、“全国の三十万人の郵政事業ではたらく人たちが、一生懸命、自民党のために票を集めてくれている、とくに特定郵便局長が、国家公務員だけれどもやってくれている”ということを堂々と書いてあります。ですから、すべて百も承知なのに、何も手を打たないで野放しにしてやらせたという責任は、総裁にあるわけですよ。人ごとじゃないんだというのが、一つです。

 それから、もう一つ、小泉さんの発言で驚いたのは、きょう報道されていましたけれども、「高祖君ががんばってくれた方が追い風になるんだ」といった。ともかくそういう姿勢なのです。

 つまり、自分のやろうとしている郵政民営化――私たちは、これは国民にとってサービスの低下になる、とくに大事な貯金が守れなくなるというもので反対ですけれども――、郵政民営化ということをやりたい、その党利党略のために高祖問題を使うという、これは言語道断な姿勢です。

 ですから、私は、この問題は、高祖氏の個人的な責任というのはもちろん重大ですし、まさに、郵政事業ぐるみで、(選挙運動が)「第四事業」とかいうそうですけれども、ここが一番改革しなければならない部分です。ぐるみ選挙をやっていたというのは非常に重大だけれども、それをやらせていたのは自民党です。それを黙認して、見て見ぬふりして、票集めをさせていた。小泉さんがその総大将なわけですから、まず自民党が真相の究明を国民の前で責任をもってやる。そして国民の前にこうでしたと明らかにする責任が小泉さんにあるということを強くいいたいですね。

 片山総務大臣の責任について問われて、志位氏は次のように述べました。

 志位 総務大臣の責任ということでいいますと、私たちはすでに選挙前にこの問題をとりあげていたのです。特定郵便局長の全国の会がありますね。それがぐるみ選挙をやっている。これはおかしいじゃないかということを、私たちの議員が片山さんを追及しましたところ、“そんなことはありえない、調べる気もない”といって突っ張ってきたわけですね。

 これは、公務員が公務員の地位を利用してぐるみ選挙をやったという話ですから、これは自民党の問題であるとともに、政府の問題でもあるのです。政府としても、この問題をしっかりした調査をして、国民の前に真相を明らかにする責任があるのに、片山さんは全然、これもやる気がないという顔をしていますね。いまでも調査するつもりがないという。これも知らぬ存ぜぬを決めこんでいる。

 両面で、自民党としても責任が問われている、政府としても責任が問われている。両方の責任者は小泉さんですから、小泉さんの責任が問われている。

特殊法人改革─国民の立場にたって、具体的な改革の方策を

 志位氏は最後に特殊法人改革についての見解を問われ、一律に「民営化・廃止」という政府の方針を批判して次のように述べました。

 志位 特殊法人は、いろいろあるということをちゃんと念頭において、それぞれに対して、具体的な改革の方策が出されていく必要があると思うのです。

第一 大企業の仕事を肩代わりしているものは縮小・廃止を

 私たちは、三つに分けて考える必要があるということで、すでに提言を出しているんですけれども、第一は、ほんらい大企業の責任と負担でやるべき仕事を特殊法人が肩代わりして、いわば大企業のリスクを引き受けて、仕事をうけおってやっているというものは大胆に縮小・廃止する。

 たとえば石油公団というのはまさにその典型みたいなもので、大企業の代わりに石油の採掘などをいろいろやって、みんな失敗しているわけですよ。それで借金だけたまった。こういうものはきっぱり廃止して、この借金は関連企業の負担で解決すべきですね。

 それからたとえば、日本政策投資銀行というのがありますね。元開銀などがころもがえして、苫東(苫小牧東部)開発に融資したりしている。ああいうものはきっぱりなくす。大企業のために長期・低利で、融資する特別の銀行なんていらないですよ。こういうものはなくす。

第二 国民のくらしに必要なものは、改革して充実させる

 第二は、国民のくらしにとって、ほんとうに必要な仕事をやっている特殊法人については、ちゃんと(業務の内容を)改革して、充実させる必要がある。

 いまお話に出た住宅金融公庫などは、なくなってしまったら、ますますマイホームの夢が遠のくという声がたくさんあがっています。それから中小企業金融公庫も、いまの事業のやり方は変えていく必要があるけれども、中小企業への公的金融というのはとても大切な仕事です。それから(日本)育英会も奨学金に携わっているんですけれども、これも若い人たちにとって、学んでいく上での命綱です。こういうところはしっかり、改革をしながら充実させていく必要がある。

第三 ムダな公共事業推進の機構は抜本的に見直す

 第三に、ムダな公共事業の推進機構になっているものがあるわけです。日本道路公団は大幅にいまのあり方を改革して、とくに新しい高速道路網をどんどんつくっていくというやり方はやめる。いまの料金収入で借金を返すことは展望があるわけですから、そういう方向で今後の借金の返し方は考えていく必要がある。これは大幅な縮小が必要です。

 それから水資源開発公団という、ダムをつくるためのものなんですが、これは、縮小・廃止ですね。いま新たに着工しようといっているダムはムダなものがほとんどですから、これはやはり大胆な縮小・廃止をやっていく必要がある。

 だいたい三つのかたまりがあるんです。それぞれについて、きちんとした対処がいるというのが私たちの考え方なんです。

 もう一点いいますと、天下りについては、別の次元の問題として、これはすぐやろうと思えば、天下りの規制・禁止というのはできるものですから、これはすぐとりくむべきだということです。

 志位氏は、都市基盤整備公団についてはこう述べました。

都市基盤整備公団――住宅部門を民間に売りとばすやり方はやるべきでない

 志位 前の住都公団を改組してしまったのですが、都市基盤整備公団がムダな大型開発に手を出して失敗しているという例がたくさんあります。これは見直しをしていく必要があるのですが、この機構を民間に売り飛ばすということになったら、いま公団住宅にくらしている方々の不安がたいへんなことになる。そういうやり方で住宅部門を全部切り売りするようなやり方というのは、やるべきではない。都市の大開発に手を出して、いろいろ失敗しているようなやり方は変えていく必要があるという考えです。

 一つひとつについて道理のある方策をきちんと吟味して、決めていくということが大事なわけです。NHKだって特殊法人でしょう。あれも民営化するのかとなったら、みんな賛成しませんよ。

 特殊法人のなかには、国民のくらしにとって公共的な役割を果たしている、大事な仕事をやっている分野もあるわけですから、そういう分野について、しっかりした仕事を求めるというのは当然なんです。