2001年7月12日(木)「しんぶん赤旗」

日本記者クラブの質問への回答

日本共産党幹部会委員長 志位 和夫


 十一日の七党党首討論会にあたり、これに合わせて日本記者クラブから各党党首にあらかじめ質問書が寄せられました。以下は、その質問に対する日本共産党の志位和夫委員長の回答の全文です。

参院選での獲得議席目標は

質問1 参議院選挙での獲得議席の目標を具体的な数字でお示しください。与党の党首は、与党全体での目標もお答えください。

 比例代表五議席と選挙区三議席(東京・埼玉・大阪)の現有議席をかならず確保し、過去最高の十五人当選を上回る構えでのぞみます。

「骨太の方針」への評価は

質問2 経済財政諮問会議の「骨太の方針」への評価と、構造改革をどのような優先順位で進めるべきか、お考えをお示しください。

 「不良債権の最終処理」を乱暴にすすめれば、大規模な倒産と失業をまねき、景気悪化の悪循環をつくります。「構造改革」の名で国民に「痛み」をおしつけ、日本経済を破綻(はたん)においこむ政策には、反対します。改革というなら、(1)「公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円」という逆立ちした財政をただし、(2)「ルールなき資本主義」をあらため、大企業の横暴から雇用、中小企業、環境をまもる民主的ルールをつくることが急務です。

中央から地方への税源移譲どうすべきか

質問3 地方交付税の見直しも含めた中央から地方への税源移譲について、どうすべきだと考えますか。

 国と地方の仕事の比率は四対六なのに、税収は六対四であり、このゆがみをただす税源移譲をすすめるべきです。地方交付税は、地域間の税収格差の調整のために今後も必要です。税源移譲なしに交付税削減をはかることは、住民の暮らしと福祉の切り下げにつながるものであり反対です。無駄な公共事業を地方におしつけ、その借金返済を交付税で手当てするしくみはあらためるべきです。交付税の使途は自治体にまかせるべきです。

「構造改革」の「痛み」をどうみるか

質問4 小泉首相は「聖域なき構造改革」を唱えています。各党とも「構造改革の必要性」と、「構造改革」には「痛み」が伴う、ということには異論ないと思います。それぞれの党が考えている「構造改革」の柱と、それに伴う「痛み」についてお聞かせください。また、セーフティーネットについて具体策をお示しください。

 国民に「痛み」をおしつける小泉流「改革」でなく、大銀行や大企業を応援する政治をただし、もうけに応じた負担をもとめる改革が必要です。公共事業は、巨大開発の浪費を一掃し、暮らしと福祉に必要なものに重点化して、段階的に半減します。大銀行応援の七十兆円の税金投入の枠組みを廃止し、自己責任原則というルールにもどします。これらの浪費をなくし、社会保障への国の支出を増やし、将来に安心のもてるしくみをつくります。

憲法9条の改正は必要か

質問5 憲法九条の改正は必要だと考えますか。その理由と、改正する場合はいつごろを想定しているかもお答えください。また、集団的自衛権の行使を認めるために、改憲あるいは解釈の変更を行うべきだとの意見がありますが、どう考えますか。

 憲法九条は、戦争の違法化という二十世紀の世界史の潮流のなかで、もっとも先駆的な到達点を示した条項であり、二十一世紀の日本の羅針盤とすべきものです。九条の改悪に反対し、国民の合意で段階的に完全実施をめざします。集団的自衛権は、日本が武力攻撃をうけているわけでもないのに、アメリカと日本が海外での戦争に「集団」でのりだすというものであり、この行使のために九条の明文あるいは解釈改憲をおこなうことは反対です。

首相の靖国参拝どう考えるか

質問6 小泉首相は八月十五日に靖国神社に参拝する意向を示しており、中国、韓国両政府はこれに懸念を表明しています。首相の靖国神社参拝についてどう考えますか。また、国立墓地構想についてはどのようにお考えでしょうか。

 靖国神社は、戦前、軍国主義の精神的支柱とされ、いまも東条元首相ら戦犯が合祀(ごうし)されています。首相の靖国参拝は、戦争放棄、政教分離など、憲法の原則をふみにじるものとして、許されません。日本軍国主義の侵略と植民地支配を受けた国々と友好関係をつくるうえでも、重大な逆流となります。国立墓地としては、すでに千鳥ケ淵墓苑があります。新しい墓地の建設を条件にするのではなく、靖国参拝はきっぱりやめるべきです。

不良債権処理による失業者の受け皿は

質問7 不良債権の最終処理で出る失業者数について、内閣府は十三万人〜十九万人と試算する一方、民間シンクタンクでは五十万人〜百万人超との推計もあります。こうした失業者の雇用の受け皿をどう考えますか。

 いま「不良債権」といわれているのは、そのほとんどがまじめに働いても、長期不況のもとで売り上げがのばせず赤字におちいっている中小企業です。それを無理やり倒産させ、大量の失業者をだす政策をとるべきではありません。家計を応援して景気を回復させ、苦境におちいっている中小企業を赤字から脱出させる政策こそとるべきです。雇用の拡大のためには、サービス残業根絶をはじめ労働時間短縮に本腰をいれてとりくむべきです。

景気対策の柱と財政再建のスケジュールは

質問8 日本経済は「不況のトンネル」から抜け出すことができないでいる一方、国・地方の累積債務は増え続けています。景気対策の具体的な柱と、財政再建の具体的スケジュールを示してください。

 国民の暮らしを応援して、景気回復をはかります。そのために、消費税の減税、社会保障の負担増の凍結と将来に安心のしくみづくり、大企業のリストラをおさえ中小企業を支援して雇用を増やすことを提案しています。財政再建は、まず、年間五十兆円の公共事業の段階的半減、大銀行への税金投入中止、軍事費の削減など、歳出の無駄を一掃します。景気回復をみきわめて、大企業・高額所得者優遇の不公平税制の是正にとりくみます。

米国のミサイル防衛構想にどう対応すべきか

質問9 アメリカのミサイル防衛構想に日本はどう対応すべきだと考えますか。

 アメリカのミサイル防衛構想は、相手国のミサイルを無力化することにより、アメリカが核兵器を自由に使えるようにしようというものであり、核軍拡競争をまねく危険な構想です。日本政府の態度は、この構想に「理解」をしめすだけでなく、弾道ミサイルの研究を推進し、アメリカの地球的規模の核戦略の一翼を担うというもので、被爆国政府として許されないものです。すみやかな核兵器廃絶のイニシアチブを発揮することこそ必要です。

「京都議定書」に日本は

質問10 地球温暖化を防ぐための「京都議定書」の扱いが問題になっています。離脱方針を表明したアメリカや早期批准を求めるEU諸国に対して、日本はどのように対応すべきだとお考えですか。

 アメリカの態度は、いったんみずからも合意した「京都議定書」から、一方的に離脱するという、国際ルールを無視した横暴なものです。日本政府は、アメリカのそうした横暴を批判し、外交上の信義を守るべきだとはっきりいうべきであり、それをしないまま「アメリカ待ち」の態度をとることは、「京都議定書」を葬ることになります。日本が率先して批准して「議定書」を発効させ、アメリカも合流させるように力をつくすべきです。

医療制度改革どのように

質問11 医療制度改革をどのようにすすめますか。負担が増えてもやむをえないとするか、それとも総額を抑制して医療も“自立・自助”の精神を重視しますか。

 医療費の負担増はすでに深刻な受診抑制をまねいています。このうえ総額を抑制して必要な医療を受けられなくすることは、国民的規模での健康悪化につながり、いっそうの医療費増大をまねき、医療制度の基盤を崩す悪循環となります。老人医療費にしめる国庫負担の割合は、この十八年間に13%も減らされましたが、これを計画的にもとにもどして国が責任を負う体制をつくり、薬価の見直しや保健予防にも本腰を入れることが必要です。




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