2001年5月31日「しんぶん赤旗」より

都議選の争点は明りょうに──
日本共産党をのばして、東京の福祉をとりもどそう

日野での志位委員長の訴えから(大要)

2001年5月27日

 日本共産党の志位和夫委員長が27日、東京・日野市でおこなった演説のうち、都政にかんする訴え(大要)は次の通りです。


 さていよいよ都議選が目の前にせまってきました。都議選の争点は、たいへん明りょうになってきたと思います。都民のみなさんの願いにこたえて、東京の福祉をどうするのかが、最大の争点です。(「そうだ」の声、拍手

シルバーパス問題が、熱い争点に浮上してきた

 第一は、切り捨てられた福祉を復活させるという問題です。シルバーパスを無料にもどす、マル福――老人医療費の助成制度をとりもどす。これが最大の争点の一つとなっていると思います。(拍手

 シルバーパス問題は、前回の都議選でも大争点でした。この間、日本共産党もがんばり、都民のみなさんの運動もがんばったわけですが、全面的な有料化が強行されました。これまで無料だった七十八万人のうち、五十四万人が千円の負担になり、十三万人が五千円の負担になりました。五千円というのは経過措置で、やがて負担は二万五百十円にまで増えていくことになります。そして利用をやめた方が十万人を超えました。このことの是非が、いま熱い争点に浮上してきています。

 東京新聞(五月二十二日付夕刊)が「何を変えるか 2001都議選」という連載を始めました。その第一回が、シルバーパス問題です。「シルバーパス “石原福祉”初の審判」。やはりこの問題が最大の争点となってきました。

 この問題で、必死になって苦しい言い訳をしているのは公明党です。「全面有料化はウソだ」、「千円は事務費であって運賃ではない」、「われわれはわずかの額におさえた」。こういうことをいっています。

10万人以上の方が利用をやめた――負担増とともに手続きでも新たな負担

 私は、シルバーパスについて、二つの大事な問題があると思います。

 一つは、公明党がどんなごまかしをいおうと、無料のものが千円になったのは事実であり、十万人以上の方が利用をやめざるをえなくなったのも事実です。そして、千円の負担でも、月額四万円程度の年金をたよりに生活されている非課税世帯の方には、けっして軽くはない負担だということです。

 なぜ十万人以上の方がやめざるをえなかったのか。そこには、費用の負担増とともに、手続きでも負担がしいられることになったという問題もあります。これまでシルバーパスは、都の責任で「交付」するということになっていました。民生委員の方などが、直接お年寄りに届けてくれたのです。しかし、今度は違う。バス会社でつくる東京バス協会が「発行」するという仕組みにかわりました。つまり、お役所にいって、非課税の方だったら非課税の証明書をもらって、つぎにバス会社にいってシルバーパスをもらわなければならない。そのためには交通費もかかります。千円〜五千円という額が負担になることに加えて、そういう手続き自体が負担になる。二重の負担で、十万人以上が制度からはずれたという事実は、重いものがあるのではないでしょうか。

「シルバーパス条例」──知事の裁量でいくらでも値上げが可能な仕組み

 いま一つの問題は、いまは千円でも、知事の裁量でいくらでも値上げが可能な仕組みに、改悪された「シルバーパスの条例」はなっていることを、私は告発したいのです。

 東京新聞(同)にもそのことが出ています。

 「現行の負担額がいつまで続くかは不透明だ。都が作成した『シルバーパス条例』は、『対象者はパスの発行を受ける際に…規則で定める額を負担する』としているだけで、金額を明記していない。具体的に書かれてあるのは施行規則。議会の議決が必要な条例と違い、手続き上は、知事の裁量で変更が可能。都がその気になれば値上げはあり得る」「福祉局も『都が事業者に補助するのはあくまで予算範囲。将来の高齢者増加に応じて増えるわけではない』として、都民か事業者の負担増の可能性を否定はしない」

 つまり、最初は千円でも、これからどこまで値上げされるかは、わからないということなのです。

 じっさい、改悪された「シルバーパス条例」をみますと、その第四条(費用の負担)に「対象者は、パスの発行を受ける際に、バスの利用及びパスの発行に要する費用として規則で定める額を負担するものとする」とあります。条例には金額は書いていないのです。そして「施行規則」というのがあって、そこで千円とか五千円とか書いてあるのです。そして、この「施行規則」を決める権限をもっているのは知事なのです。つまり知事の一存で、いくらでも値上げができる。議会の条例改定抜きに、いくらでも知事の裁量で値上げができるように、白紙委任を与えてしまったということも、シルバーパスの問題の大問題なのです。

いっそうの値上げの危険をなくすためにも、無料化復活が一番たしかな道

 ですから、このまま都民がだまってこれを放置するならば、やはりこれはどんどん値上げがされる危険があります。

 思い出していただきたいのは、お年寄りの医療費の問題です。無料だった医療費が、有料化されたのは、一九八二年のことでした。最初は、“月額で最大四百円までしかとりません。だからがまんしてください”と、有料にされました。しかし、いったん有料になったら、どんどん医療費の値上げがつづき、今年の一月からは一割定率負担にまで値上げされました。いまでは、一回お医者さんにかかっただけで、千円から二千円ぐらいの負担がかかるようになりました。

 無料のものをいったん有料化したら、歯止めがきかなくなる。しかも条例そのものが、歯止めのきかない仕組みになっている。これも大きな問題だと思います。

 ですから、いっそうの値上げの危険をなくすためにも、無料化を復活することが一番たしかな道だということを、私は訴えたいと思うのであります。(大きな拍手

 この問題についての各党の立場は、はっきり東京新聞(同)でも書いてあります。「今回はパスをめぐり、共産が『無料化復活』を訴え、公明は『低額負担』を実現させた実績を強調する。自民や民主は『パスの問題は今回の争点ではない』と静観の構えだ」

 みなさん、日本共産党の躍進で、シルバーパス無料化、マル福の復活、切り捨てられた東京の福祉をとりもどそうではありませんか。その願いを村松さんに託してください。よろしくお願いいたします。(大きな拍手

介護保険の導入が、逆に「老後の不安」をひどくしている

 第二の争点は、介護保険の利用料・保険料の減免制度を都につくらせるという問題です。これは、日本共産党都議団が一貫して提案し、運動の先頭にたってきたことです。

 介護保険は、実施から一年以上がたちましたが、利用料と保険料が重すぎるという問題がどこでもきかれます。所得の少ない方が、泣く泣くサービスを削らざるをえない実態があります。先日、私は、大田区に応援にいったさいに、大田区の各界の方がたと懇談しました。一回八百三十円の訪問看護を削らざるをえない。一回千二百五十円の訪問入浴を削らざるをえない。こういう痛切な実態が語られました。

 そのうえこの秋から、高齢者の保険料が満額徴収される。みなさんのところにも通知がきていると思います。月額一万五千円以上の年金の方からは天引きしてしまう。だいたい天引きというのもけしからん話です。私たちは、税であれ、保険であれ、合意して、納得ずくで、これを納めるというのが民主的な原則だと考えています。給料からの天引き、ましてや年金からの天引きなどというのは、やり方のうえでも許されるものではないと思います。(拍手

 この問題が、いまたいへんに切実です。日本銀行が、昨年十二月に「生活意識に関するアンケート調査」というのをやりました。この世論調査で、「介護保険の導入によって、老後の不安はどうなりましたか」と聞いたら、「不安感が減った」という方はたったの一八・八%です。「変わらない」という方が五一・九%、「不安が増した」という方が二二・三%です。かえって不安が増えることになっている。

日本共産党を躍進させ、新しい都議会で介護保険の本格的な減免制度を

 『アエラ』という雑誌で紹介されていましたが、近藤克則さんという日本福祉大学の助教授が、介護保険についての調査をやっています。所得と要介護者になる割合の関係を調査したのです。そうしましたら、お年をめして、介護が必要になる確率は、収入が少ない方ほど高いことが、はっきり出てきました。収入の少ない方は、病気の心配があっても、医療費の心配からがまんしてしまうようなケースが多いというのです。さまざまな要因が重なって、収入の少ない方ほど、介護が必要になる場合が多い。貧困と病気が、表裏一体の関係にあるのです。

 ところがいまの介護保険というのは、そういうもっとも介護を必要としている方に、耐えきれない負担を求める。制度から排除してしまう。ここにいちばんの問題があります。ですから、所得の少ない人でも安心してこの制度を使えるよう、どうしても利用料・保険料の減免制度をつくることが必要です。

 すでに都下六十二の区市町村のうち、三十八の区市町村で、利用料・保険料の減免制度がつくられました。それならば、都としても減免制度をつくれということを、いま日本共産党が党をあげて、都民のみなさんといっしょに要求しています。そのなかで、三月の都議会で、知事が、社会福祉法人が利用料の減免をおこなったときには、都が支援をおこなうという初めての表明をしました。貴重な突破口が開かれました。都民のみなさんの運動と日本共産党のがんばりが、一歩ではありますけれども、行政を動かしつつある。こんど選ばれる都議会というのは、秋からの保険料の全額徴収のもとで、どういう減免制度をつくるかが、本格的に問われる都議会です。日本共産党を躍進させることは、新しい都議会で、都の制度としてしっかりとした減免制度をつくる、もっともたしかな保障となるのではないでしょうか。(拍手

日本共産党の主張は、3つの裏付けをもっている

 みなさん、都議選の熱い争点となりつつある、「切り捨てられた福祉をとりもどす」、「介護保険で減免制度をつくる」という主張について、日本共産党は三つの裏付けをもって主張しているということを申し上げたい。

 一つは、四年間の都議会のたたかいの裏付けがあるということです。この間の石原都政にたいして、日本共産党は、「いいことはいい、悪いことは悪い」という立場を貫いてきました。とくに、都民いじめの悪い政治には、都民のみなさんといっしょに断固反対してがんばりぬくという立場でやってまいりました。シルバーパスでも、マル福でも、福祉切り下げに反対を貫いた唯一の政党が日本共産党です。自民党も、公明党も、民主党も、社民党も、他党がこの問題についてまともにものをいえないのは、そろって公約破りの福祉切り捨てをすすめたからです。ネットも、シルバーパスの全面有料化には賛成でした。日本共産党をのばしてこそ福祉はとりもどせるということが、この四年間の実績をみても明らかだということをまず訴えたいと思います。(拍手

 二つは、財源の裏付けをもって提案しているということです。三月の予算都議会で、日本共産党の都議団は、都民要求を実現する予算の組み替え提案をしました。都には年間約十二兆円の予算があるのですが、そのうち、九百十九億円のむだづかいを節約すれば、いまのべた福祉復活、介護保険の減免、不況対策、子育てと教育対策、環境とまちづくり対策などについて、いまの都政のもとでも緊急要求の実現ができる。よく私たちは、わかりやすくということで月十二万円の家計におきかえていうのですが、月十二万円の家計だったら、九百十九円のむだづかいをやめれば、いまいったことを全部できる。そういう組み替え案を都議会でちゃんと提出している。政治の姿勢を変えればできるんだということを、実際の具体的な案として示してきた。日本共産党の提案には、そういうたしかな財源の裏付けがあるということもぜひご理解いただきますと、幸いであります。(拍手

 三つは、私たちの政策は、都民要求の裏付けをもっているということです。東京都の調査で、都政への要望の調査(「都民生活に関する世論調査」)を毎年やっていますが、その第一位は、ずっと「高齢者福祉」です。最近の調査でも、「高齢者福祉」と答えた方が四四・七%です。男性では二十代では「高齢者福祉」は二番目の要求ですが、三十代以上はすべて一位です。女性も二十代は二位ですが、四十代以上はすべて一位です。若い方だって、おじいちゃん、おばあちゃんがいる。中年の方だって、お父さん、お母さんがいる。そしてだれでもいずれは年をとります。ですから、都民みんなにとっての切実な問題なのです。シルバーパスについても、マル福についても、介護についても、都民みんなの願いを代弁し、実現しようといっているのが日本共産党なのだということも、ぜひ確信をもって、広げようではありませんか。(拍手




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