2001年2月15日(木)「しんぶん赤旗」

党首討論

米原潜衝突

志位委員長が国民の怒り代弁


 「あなたには総理として国民の生命をあずかる資格はない」―きびしい表情で森喜朗首相を指さす日本共産党の志位和夫委員長。今国会初の党首討論で、志位氏は日本の高校生が乗った実習船を沈没させた米原潜の無法と政府の無責任さにたいする国民の怒りをぶつけました。答弁資料を棒読みしながら、米太平洋軍の説明をおうむ返しするところまで、森首相をおいつめた6分間を再現します。

米軍の説明くり返す森首相

 志位和夫委員長 アメリカの原潜が、実習船「えひめ丸」に衝突し、沈没させた問題について質問いたします。

 私はまず、被害にあわれた方々に心からお見舞いをのべるとともに、行方不明の方々の捜索・救援に全力をあげることを強く要求します。

 無法な米軍の行動に、強く抗議をいたします。

 その上で、森総理の姿勢について、二つの点にしぼってうかがいます。

 一つは、総理が事故の第一報を受けた後、二時間近くもゴルフを続けたという問題です。

 宇和島水産高校のホームページをみますと、こういう声が寄せられています。

 「こんな悲しいニュースを聞いて、首相はゴルフを楽しんでいられるのか、非常に腹立たしく思いました」。「情けなくて、涙がとまりません」。「こんなことでは、あなたに首相はまかせられません」。これは国民みんなの声ですよ。

 さきほど、総理は、るる答弁されておりましたけれども、しかし、結局は「何が悪い(のか)」という答弁だったと思います。(首相への第一報では)米軍の原潜に日本の高校生が乗っている船が沈められた。乗組員三十五名のうち、二十五名しか安否が確認されていない。命がかかっている状況がある。そうであるなら、総理が、まず最高責任者として、救援と対策にみずから乗り出して全力をあげる。これは当然だと思います。ゴルフを続けるという態度は、私は総理にあるまじき態度だと考えますが、一片の反省もないのですか。

森首相=居た場所がよくなかったことは反省

志位氏=ゴルフの片手間にできる仕事ではない

 森喜朗首相 先ほども、鳩山議員のときも申し上げましたけれども、最初に報告を受けたときは、まだこれが海に投げ出された状況であって、捜索をしておりますということで、救出しておりますというときでございます。もう少し様子をみて、その連絡がくるまで、もう少し私どもとしても、そこで情報をとるまで少し待っててほしいということでございました。

 私は、したがって、アメリカ政府に対して、きちっと情報をとるようにということと、人命救助に全精力をかけてほしいということを申し上げました。

 私は、そこできちっとした指示をすること、そしてそこできちっと情報をとること、そのことの態勢をとるということが、私は一番大事だと、こう考えています。

 したがって、責任があるのだとおっしゃいますから、私は先ほど、責任も感じていると申し上げた。それは、態勢をとったこと、措置をしたこと、このことはきちっとしました。ただ、私のその場所がよくなかったとすれば、そこは反省しなければなりませんし、それは自分なりの責任を感じていますが、しかし、現実問題として、いかなる場所にいたとしても、やっぱり私は、その場所にやっぱりとどまって、指示をした、私はそう思います。

 最初は、神妙な顔で聞いていた森首相は答弁にたったとたんに居直るかのような能弁ぶり。自民党席からは「最初はわからなかったんだよ」と無責任なヤジ。しかし、志位氏は森首相の態度をきっぱりと批判しました。

 志位委員長 ゴルフの片手間にやるような仕事ではないということを私ははっきり申し上げておきたいと思います。

 もう一点ききます。アメリカの原潜が衝突後に救援活動を行わなかったということが問題になりました。これに対する日本政府の側の対応も問題であります。

 「えひめ丸」の大西船長は会見で、「潜水艦に救助された乗組員はいない。ただ監視されているような感じだった」と原潜側の対応を厳しく批判しました。

 私ども日本共産党として、いま現地ハワイに緒方(靖夫)国際局長を団長とする調査団を出しております。けさ、緒方さんから私の方に報告がありました。現地でもこの潜水艦の対応が大問題になっております。

 ファクスで送られてきましたが、これは「ホノルル・アドバタイザー」という、ホノルルでの一番の大きな新聞です。「潜水艦の対応への批判高まる」。大見出しですよ、一面で。そして、大特集が組まれていて、潜水艦の問題について、対応はこれでよかったのかということについての批判が、専門家の批判が、ずうっと載ってますよ。

 たとえば、原潜の元艦長のジム・ブッシュ氏。「生存者を収容しなかったのは、まったく弁解の余地のないことだ。ダイバーが海に飛び込んでいくことは可能だった」と、こうのべています。

 海事法弁護士のジョン・ギブソン氏。「潜水艦のクルーがしたことは、まったく不当だ。彼らは、生存者を探そうともしなかった」。こうのべているんです。

 アメリカの政府も、パウエル国務長官が「まだ、この問題については調査中なので、結論は待ちたい」。こうのべています。

 私が問題にしたいのは、あなたが現地に送った桜田外務政務官は、現地でブレア太平洋軍司令官と会見して、「潜水艦の救助活動は適切だった。落ち度はなかった」。もう、認めてしまっているんですよ。

 調査活動をやらないで、どうして「落ち度がなかった」といえるんですか。こういう態度で、どうしてきちんとした真相の究明、責任の追及ができますか(「そうだ」の声)。答えてください。

 桜田外務政務官の態度を批判したくだりでは、与野党席とも静まりかえりました。

志位氏=「原潜の救助活動は適切」が政府の態度か

森首相=最終調査結果を待ちたい

志位氏=結果出てないのに「落ち度なし」と認めたのか

 森首相 原子力潜水艦グリーンビルの衝突後の動きにつきましては、ファーゴ米太平洋艦隊司令官より、ハワイにいま出張いたしております、ご指摘の桜田外務大臣政務官にたいして、説明がございました。グリーンビルは、事故発生直後からは、捜索救助活動にあたっております。グリーンビルは、事故発生後、ただちに沿岸警備隊に通報いたしております。そして、「えひめ丸」の救命いかだを見ております。そして、沿岸警備隊と連携しながら、捜索活動に集中した。こういう報告をうけております。

 専門的には、潜水艦の形だか、いわゆる湾曲構造とか、そういう面では、難しい技術的なものがあるのではないかというふうに、われわれも、日本側の専門家からも聞いております。

 いま、ご指摘あった新聞のことは、アメリカ側がいっていることです。それも、私どもは、同じようなことをいっているわけではありません。私どもとしては、なぜやれなかったのか、当然そのことについて説明も求めていますし、なぜ少なくとも、ハッチをあけて、そこにいれることができなかったのかということも、当然われわれとしても、そのことについては問いただしているわけであります。

 まだ、最終的な調査結果が解明されてないわけでありますから、私どもは、解明された事故のそういう原因等も、全部つまびらかに、これから承知したいと思います。

 森首相を応援するかのように自民党席からは「アメリカ海軍が悪いんだよ」「アメリカに文句いえ」などとヤジが飛びました。志位氏はきっぱりと首相にいいました。

 志位委員長 最終的な調査結果が解明されていない段階で、米軍のいうことを「結構、結構」と認めてしまっている。あなたがいま答弁したことは、太平洋軍がいった説明を、そのままおうむ返しにしたものですよ(「そうだ」の声)。あなたには、およそ、一国の総理として、国民の命を預かる資格はない。このことをはっきり申し上げて、質問を終わります。


米調査で追及、感動した

志位委員長質問に反響

生命の大切さ知らない首相辞めよ

 日本共産党の志位和夫委員長が十四日の党首討論で、愛媛県立宇和島水産高校の実習船と米原潜の衝突事故をめぐる森喜朗首相の対応を厳しく追及したことについて、党本部などに電話やファクスで激励、共感が続々と寄せられました。

 「党員ではないが、いまテレビで志位さんの質問を聞いていて、ひとことお礼をいいたくて電話した。国民にかわって気持ちを伝えてくれた。本当にありがとう。長年、外国で暮らしていたが、日本にこんな立派な政治家がいるとはうれしいかぎりだ」(石川県・男性)

 「アメリカでの調査資料にもとづいての追及はとてもよく、感動した」(中年男性)

 「森首相は生命の大切さを知らない。早く辞めさせてほしい。志位さんの追及は、力が入っていて大変よかった」(中年男性)

 「夫婦で小さな旅行社をしていますが『国会抗議行動ツアー』を計画したいと本気で話し合っていました。志位さんが私たちのいいたいことをしっかりと発言してくださって感激いたしました」(大阪府・男性)

 「志位さんの質問はバッチリだった。最後の一言(一国の総理として、国民の命を預かる資格はない)は私らの気持ちと一致していた」(新潟県・女性)

 「党首討論を見た。森総理は本当にひどい。森の言動には本当に腹が立つ。悔しくて泣けてくる。こうした追及は、共産党しかできないことだ。頑張ってもらいたい」(広島県尾道市・男性)