2001年1月 25日(木)「しんぶん赤旗」

CS放送朝日ニュースター 志位委員長、明快に語る

当面する政局、通常国会にどうのぞむか


 日本共産党の志位和夫委員長は二十四日、CS放送朝日ニュースターの「各党はいま」に出演し、朝日新聞政治面編集長の峰久和哲氏の質問に答え、当面する政局、通常国会にどうのぞむかについて発言しました。その大要を紹介します。


 峰久 志位さん、書記局長から委員長になられて日常生活というのはかなり変わったんですか。

 志位 いや日常生活はそんなに変わらないですね。

 峰久 国会質問なども委員長みずから、予算委員会に立つということはお考えですか。

 志位 それはいろいろな場合があると思うのですが、予算委員会に立つこともやっていきたいと思っています。

経済、外交、教育の問題など骨太に論戦をやりたい

 峰久 そうですか。いま、国会を前にしてKSD事件だとか機密費の疑惑とかいろいろ森内閣をゆるがす問題が次々出てきています。閣僚の辞任という事態にもたちいたっています。はじめに、ちょっとひねった質問をさせていただくのですが、こういった問題がもしなかったならば、今度の国会で志位さんが一番重点をおいてとりくみたい課題はどういったことだったでしょうか。

 志位 二十一世紀になって、戦後半世紀つづいた自民党(政治)がどの分野でもゆきづまっています。経済、外交、教育の問題など、大きな分野でどこをみても、いまのままの政治ではもう二十一世紀に日本の国民に責任を負える政治をやっていけないというところにきていると思うのです。それを一つひとつただす、骨太な論戦をやりたいなというふうに思っていました。

 峰久 経済問題ではおもにどんな点に重点を。

家計を応援することで日本経済をよくする方向への転換を

 志位 経済の問題でいいますと、戦後ずっと自民党がやってきたのは、(政治が)大企業を応援する、そうすれば大企業がもうけをあげて設備投資を拡張する。そうすればだんだん雇用も増え、所得も増え、最後には家計も豊かになると、そういう考え方でずっとやってきたわけですね。

 「高度経済成長」の時期には、大企業がうるおえば、一定部分は家計にもまわるという状況があったのだけど、いまは大企業がリストラでどんどん吸い上げるものだから、大企業だけはもうかるけど、庶民の生活はどんどんひどくなるという状況が生まれてきて、そういう大企業応援の政治はもう通用しなくなるというところまできていると思うのです。

 ですから九〇年代に入って、結局、十年間にわたってずっと不況がつづく。多少波はありますけど、家計消費(実質)は八年間連続マイナスですよ。戦後最悪の記録を更新しています。経済の一番の主要な部分が冷え込みつづけている。従来型の「景気対策」というと大企業の応援をやる、ゼネコンにお金を入れる、あるいは大銀行を支援する、こういうやり方がゆきづまってしまったというのがいまの経済の状況なので、この大転換が必要だということを、私たちは経済論ではやりたいと思っているのです。家計を応援することで日本経済全体をよくしていくという方向への転換がいま必要だと思うのです。

 峰久 教育問題も重点的に取り扱いたいということですが、どういう問題意識をもとに議論を展開するご予定ですか。

すべての子どもに基礎・基本をわかるまで教えることを当たり前に

 志位 いま、たとえば「十七歳の問題」などとよくいわれますが、子どもの世界がたいへん荒れている。いろいろな危機的な状況があります。これにはいろいろな原因があります。社会のゆがみも反映していますし、さまざまな問題があるのですが、私たちはやはり学校教育の問題が非常に大きな原因の一つを占めていることはまちがいないだろうと考えています。

 とくにいま、「学力の危機」ということがいろいろと問題になっています。(学校の)勉強について、たとえば小学生、中学生、高校生のアンケートをとりますと、「学校の勉強がよくわかる」という子どもが本当に少ないわけですね。高校ぐらいになりますと、三十人に一人ぐらいしか「よくわかる」という生徒がいない。それから、この前、国際比較の調査が出ましたが、世界各国を比較しますと、(日本の子どもは)平均点はそこそこの点をとっているのだけれど、数学、理科が「嫌いだ」と。世界で一番、数理が「嫌い」な子どもにさせられてしまっている。「わからない」「嫌い」という問題ですね。

 すべての子どもに基礎・基本がわかるまでしっかり教えるということが学校教育の最大の仕事ですが、これがやられていない。

 どこに問題があるかというと、小学校の低学年から学習指導要領というマニュアルで、つめこみをやる。たとえば小学校一年生で漢字とひらがなとカタカナとたいへんな字数を覚えさせる。ですからとてもついていけない。そういうつめこみという問題があります。

 もう一つ、さらに根本をいいますと、子どもを競争にかりたてて、ふるいわけをする、序列をつける。一番、子どもにとってつらいのは高校入試ですけれども、高校入試では、だーっと序列をつけられてしまって、しかもそれが入試だけではなく内申書という形で日常的に序列化される。このつめこみと競争による序列化――これが子どもを勉強嫌いにさせ、学ぶ喜びを奪ってしまっているという状況があると思うのですね。

 長年、文部省がやってきたやり方が、「学力」という点でもゆきづまらせてしまっている。ですからこれは本当に憲法と教育基本法にたった大改革がここでも必要です。すべての子どもに基礎・基本がわかるまで教えるということを当たり前にしていく改革が必要だということを、私たちは、おおいに訴えていきたいと思います。

KSD汚職──自民党は中小業者の血と汗の結晶に寄生する腐敗政党

 峰久 一月三十一日に始まる通常国会の序盤の非常に大きな焦点はKSDということになろうかと思いますが、この事件の全体像についてどういうイメージをもっていらっしゃいますか。

これまでの汚職・腐敗事件と違った新しい特質

 志位 この事件は、いくつか、これまでの汚職・腐敗事件と違った新しい特質があると思うんですよ。

 一つは、政界工作に使われた十五億とか二十億とかいわれるお金の原資が、中小企業のみなさんの血と汗の結晶である共済掛け金であるということです。これを原資にして、そこから吸い上げていたという問題です。この怒りが非常に強いわけです。KSDという団体は年間の収入が二百五十億円ぐらいある。ところが災害補償に支出しているお金というのはだいたい八十億円ぐらいで、三分の一しか本来の目的に使ってない。あとは、お金が余っている。その余ったお金のなかから巨額の政界工作資金が流れる。

 これまでいろんな疑獄事件があったのですけれども、たとえば、ロッキード事件でしたら、外国の航空機メーカーからお金が流れる。リクルート事件だったら、バブル(経済)の成長産業からお金が流れる。ゼネコン事件だったら、ゼネコンからお金が流れる。大企業のお金が流れたのですけれども、今度は不況のなかで大変な苦労をされている中小業者のみなさんの(掛け金の)上前をはねている。これが非常に悪質ですね。

 もう一つは、いま問題になっている小山氏、額賀氏、村上氏など、個々の政治家の疑惑を徹底的に糾明する、どう行政をねじまげたか、どういう賄賂(わいろ)をもらっていたのか、この疑惑をしっかり糾明するのは当然ですけれども、私は、今度の事件というのは自民党が丸ごと汚染されているというところに大きな特徴があると思うのです。

 たとえば、党費立て替えという問題があるでしょう。つまり、村上氏あるいは小山氏を(参院比例代表)名簿上位に載せるために、幽霊党員の名簿を作って、党費を立て替えてやる。これが一番太いルートで、この五年間だけでも、東京都の(豊明)支部だけでも十二億円のお金が党費立て替えで流れた。この十二億円というお金は結局、自民党に入ったわけですよ。これが大事な点です。つまり、村上氏や小山氏はKSDから“議員バッジ”をつけてもらった。自民党はお金を“上納”してもらった。お金を吸い上げたのは自民党なんです。自民党本部に金が入っている。

 ですからこれは、村上氏、小山氏の個人の問題だけでなく、自民党全体がそういう政官業(癒着)の腐敗の構造にどっぷりつかっている。中小企業のみなさんの血と汗の結晶に寄生する腐敗政党だというところが一番の問題です。その本丸に迫る追及をやっていく必要があると思っています。

 峰久 その追及の段取りなんですけれども、やはり、まず証人喚問を突破口にするということになりますか。

証人喚問は大きな突破口、徹底した調査活動を

 志位 証人喚問は、大きな突破口になります。私たちは、小山氏、額賀氏、村上氏と三人の証人喚問を(野党で)一致して要求していますが、これ(追及)には二つの段階があるんですね。

 つまり小山氏にしても、村上氏にしても、まずKSDのいわば“兵隊”として国政に“送り込まれる段階”があるわけですよ。これは、さっき言った党費の立て替えからすべて丸抱えで送り込まれる。これが最初の段階です。

 送り込まれて、国会のなかで、こんどはKSDのために“働く段階”があります。ここでは、小山氏の側が請託を受けて、国会でKSD応援の質問をやって、賄賂をもらったということが明らかになっているわけですけれども。

 “送り込まれる段階”とKSDの意のままに“働く段階”と両方あるわけですが、この“働く段階”は、賄賂だと認定されれば、刑事事件になるわけです。“送り込まれる段階”というのは、なかなか刑事事件にはなりにくいんだけれども、しかしこのときに巨額のお金が動いているわけですから、政治的、道義的責任というものがすべて問われてくるわけですね。これは、村上氏、小山氏の政治的、道義的責任も問われるし、自民党の政治的、道義的責任も問われる。

 証人喚問をやることによって、まず彼らがいかに政界に送り込まれたか、幽霊党員や党費立て替えがどうだったか、この全容を明らかにすることが必要ですし、そして、どういうふうに行政をゆがめたかという、彼らが“兵隊”としてどういう働きをやったかということも明らかにしていく必要があるわけです。これは、どうしても証人喚問が必要です。

 峰久 なるほど。証人喚問は、古くはロッキード事件でですね、ずいぶん多くの国民がテレビにくぎづけになったわけですけれども、最近、証人喚問だとか参考人質問だとか、いろんな場面であるんですけれども、私が感じますのは、やや質問する側の議員さんが勉強不足であったりですね、あるいは取材不足であったりして、なにか追及不足、繰り返しが多くて、ただ感情的にがなりたてるだけということで、どうも見終わったあとで何も出てこなかったなということが非常に多いんですね。とても残念に思うんですけれども。今度もそういうことであっては困ると思うんですけれども、日本共産党としてはなにか、証人喚問に向けてしっかりした調査活動といいますか…。

 志位 KSDの問題では、一昨日の常任幹部会で、特別の追及委員会を党内に設置しまして、党本部のスタッフ、国会のスタッフ、「しんぶん赤旗」のスタッフを全部総合して、徹底した調査活動をやる体制もとりました。やっぱり証人喚問をやるからには、その場で新しい事実が明らかになるということがどうしても必要です。ロッキードのときにはかなりそれが効果をあげて、一方で国会では、国政調査権の発動として証人喚問をやる。検察は検察で追及をやる。これが車の両輪として機能して、疑惑解明がすすんだわけですけれども、そういう状況にもっていくうえで、わが党ががんばる必要があると思っています。

 峰久 他の野党との連携ということについては、どうお考えでしょうか。

野党四党が一致して国民に訴えていくとりくみをおおいに

 志位 これは、追及という点で一致しているわけですから、さまざまな連携を当然やっていくことになります。たとえば証人喚問ということでも四党が一致して強く求めていく。それから四党で一致して国民に向かっても事態の深刻な問題点、本質をおおいに訴えていく。さまざまな共同のとりくみをおおいにすすめたいと思っています。

 峰久 志位さんは、三人の議員について言及されましたけれども、そのほかに、旧労働省の人たちとか、そういった人たちをターゲットに、ということは考えていませんか。

 志位 全体(の追及)が必要ですね。これに直接にかかわった議員個人ということになりますと、KSDからKSD豊明会、自民党の豊明支部、そして豊政連この豊政連を通じて数十人から百人といわれる自民党の国会議員に陣中見舞いがいったり、さまざまな形での利益供与がいっているわけですから、それにかかわった政治家はすべて責任を負っているわけです。

 KSDというのはもともと公益法人であって、政治活動はやってはいけない。ましてや政治献金をやってはいけない。そういう団体が(KSD)豊明会というトンネル団体をつくって、さらに自民党の豊明支部がトンネルになって、金がばらまかれる仕組みがあったわけですから、そういうものにかかわった政治家はすべて大きな責任を負っている。それが刑事的な対象にならない場合であっても、たとえどういう額であっても、私は、中小企業のみなさんの掛け金から上前をはねていたような政治家というのは、ほんとうにみずから恥じて、責任を明らかにするということが求められていると思います。

 峰久 なるほど。志位さんは、これは、自民党個々の議員ではなくて、自民党全体の汚染だとおっしゃったんですけれども、いま志位さんがお持ちの材料でですね、だいたい自民党の何人ぐらいの議員が政治的責任をとらなければならないとみていますか。

自民党全体の汚染をあばかないと実りある決着はつかない

 志位 直接は、さきほど言った豊政連から陣中見舞いだのパーティー券だのさまざまな利益供与を受けた数十人から百人という人は直接の責任があるんですよ。それからヤミ献金をもらっていた額賀さんなり、それから村上さん、小山さん、これは当然責任がでてくるわけですけれども、自民党という政党にお金が入っているわけですね。党費の立て替え払いなどの形で、事実上のヤミ献金が入っている。これは、脱法献金、違法献金ですよ。これが自民党の本部に入っているわけですから。党が丸ごと責任をとらなければならないという問題ですね。

 ここを追及しないと、私は個々のいろいろな問題の究明も生きてこないと思いますね。個々のいろいろな問題の究明も、本丸である自民党全体が政官業の癒着によってどれだけ汚染されているかということを、底まであばくことにつなげないと、この問題のほんとうの意味での実りある決着はつかないと思いますね。

 峰久 ということは、こんどの国会では、いきつく先は森首相の退陣というところまでやはり目標を定めておられるということですか。

 志位 森首相を退陣に追い込んでいくということは当然です。それにとどまらず、自民党全体の金権腐敗体質というものがあるわけです。KSDの問題がたまたま今度は出てきたわけですけれども、それではほかの参議院の比例名簿に登載された候補者がどうかとみれば、軍需産業と結びついている官僚(OB)もいれば、建設業界と結びついている官僚(OB)もいれば、みんな第二、第三の「KSD」をしょっているわけでしょう。そのいわば“兵隊”として国会にでていくわけですね。そういう構造がすべての分野であるわけですから、そこを含めて厳しく処断していく。世論の審判を下していく。もちろん森首相の自民党総裁としての責任は追及しますけれども、自民党自体を丸ごと退場してもらうというような方向の国民の審判を下していく必要がありますね。

 峰久 じゃ、予算委員会の総括質疑に入る前に、そういった問題についてのさまざまな議論をしなければならないということになりましょうか。

 志位 私たちがいま要求しているのは、これだけ問題が明りょうになったわけだから、さきほどの三氏の証人喚問は、閉会中であってもすぐ、開くべきところ(委員会)を開いて、ただちに証人喚問をやるべきだ。真相究明の仕事はすぐにやるべきだという立場です。

業界ぐるみ選挙をひどくする非拘束名簿式

 峰久 参院議員の小山さん、村上さん、党費の立て替えという問題が先ほど出ましたけれども、それ以前にも久世さんの問題がありましたね。その対応策として自民党が持ち出してきたのが、非拘束名簿式の比例代表制ということなんですけれども、いまのままでいきますと、今度の参議院選挙はこの制度でおこなわれるわけですね。この制度についてどういうふうに思われますか。

選挙の投票日までぐるみ選挙をやることに

 志位 ますます悪くすると思いますね。いま問題になっている政官業の癒着の選挙、つまり業界ぐるみ選挙というものは、ますますひどくなると思います。

 これまでの拘束式名簿のときには、名簿順位を決めるまでが、業界ぐるみの競争でした。決まっちゃったあとは、あまり競争がないわけですよ。それで決まりですから。今度は、選挙の投票日まで業界ぐるみ選挙をやるわけですから、これはますます業界ぐるみの選挙という点から見ても、腐敗をひどくすることになりますね。

 この選挙制度自体について、私たちは、比例代表というのは政党を選ぶ選挙なのに、そこに政党の名前を書いてもらう自信がなくなった政権党が、個人名でも票が横流しできるようにという非常に邪悪な党利党略をもって持ち出してきたものだと、選挙制度自身について批判してきましたけれど、業界ぐるみ選挙をひどくするという点でも今度の選挙制度はますます悪くなる。それをおおいに告発しながら選挙をたたかいたいと思っています。

 峰久 民主党の菅さんが非拘束という枠組みは変えないにしても、まず政党名で投票して、政党名が書いていない票は無効であると、そのうえで個人名をさらに書くと、そういう制度にしたらどうかということを提唱しておられますがいかがでしょうか。

 志位 これは、ちょっと中途半端な案だなというのが私たちの考えです。つまり、非拘束式という枠内での一つの手直しなんですね。そういう側面がどうしてもある。ただ政党名を書くことで票の横流しという私たちが批判してきたことはやりづらくなる。そういう側面もあります。両面がある案だなと考えて、私たちは共同提案するのはちょっと無理すじだということですが、賛否はよく吟味してやりたいと思っています。

 峰久 ある程度評価できる面もあると…。

 志位 そういう側面もあるんですけども、しかし非拘束式という枠内のものである。両面あるんですね。

 峰久 選挙についてもう一点うかがいたいんですけれども、昨年十二月に国勢調査の速報値がでまして、区割りを変えなきゃいけない、衆議院選挙なんですけれども。それが出て、さあやりましょうという段階になって、与党のほうから中選挙区に戻そうという発言がいくつか出ています。どういうふうにお考えになりますか。

民意をゆがめる小選挙区制を大本から見直し、比例代表制を中心に

 志位 中選挙区といっても、一部に二人区をつくるということであって、中選挙区に戻すという話とちょっと違うんですね。これは、非常に党略的なその場しのぎのやりかたであって、私たちはとうてい賛成できないものです。

 国勢調査の結果、一票の格差がうんと広がっちゃって、そこから問題が生まれているんですけれども、私たちはもともと小選挙区制導入のときから、必ずこうなると批判してきたんですよ。小選挙区制というのは一人一区で、区割りが決まってますが、人口はどんどん変動する。格差が拡大した場合はいちいち区割りを直すしかこれは方法がないと(峰久「そのとおりです」)。小選挙区制を守る場合はですね。つまり年中区割りをいじってなきゃならないという、そういう点でも非合理な制度だとわれわれはいってきたんだけれども、そういう矛盾がいま噴き出てしまった。そこを一部二人区をつくるという非常に党略的なこそくな手直しをやろうというのがいまの政権党のほうの思惑だと思います。

 私はそういう形で小選挙区制の矛盾が噴き出したのだったら、小選挙区制という制度そのものを根本から見直していく必要があるのではないか。この間の選挙でも、自民党がたとえば二割台の得票しかできなくても、四割台の議席を占めていくという、そのテコになっているのが小選挙区制です。民意をゆがめる制度を、このさいきっぱり廃止する。私たちは比例代表制を中心とした制度にすべきだといっているんですが、それへの切り替えがいま必要ではないでしょうか。

機密費──“白昼堂々の使途不明金”

 峰久 国会の話にもどりますけども、KSDのほかにもう一ついま大きな問題として、外務省官房の機密費の問題が起きていますね。この問題をどういうふうに取り上げられますか。

機密費という制度をきれいさっぱり廃止に

 志位 機密費というのは、まさに使途不明金です。“白昼堂々の使途不明金”を使うようなものです。つまり予算にいちおう計上されるんだけれども、機密費ということで領収証もいらない、ですからどう使われたかわからない。会計検査院のいちおう(検査)対象にはなるんだけれども、しかし、領収証がないわけですから調べようがない。まったくの使途不明金がまかり通っているという事態ですね。

 今度、外務省の幹部が、競馬の馬(の購入など)に使ったりむちゃくちゃな乱脈をやっていた、そのこと自体はきちんと調べて、きちんとした責任を問うことは当然なんだけれども、その根っこにそういう“白昼堂々の使途不明金”という問題があるわけで、これは外務省も持っている、官邸も持っている、このお金は事実上どんぶり勘定みたいに一体のものとして使われている、そういう実態があるわけですから、この機密費という制度はきれいさっぱりやめる。廃止する。そして本当に必要な経費があるのでしたら、堂々と予算に提案したらいいということです。そこまでさかのぼって問題を根っこから解決すべきではないでしょうか。

 峰久 参議院選挙のおそらくあとになるんだと思いますけども、次の衆議院選挙、これはまさにいまの与党がもしかしたら野党に転じるかもしれない非常に大きな節目になる選挙になると思われるんですけれども、そのさいですね、よく民主党のかたとか、あるいは自由党のかたは、共産党次第だみたいなことをおっしゃるんですね。ようするに共産党が非自民政権の一員として仲間に入ってくるなら、まあ数あわせの話ですけど、非常に強力な政権ができる。しかし、共産党がいまのままではなかなかむずかしいねと、おっしゃるんですけれど、非自民ということにおいて、民主党などの政党と連立して政権をつくると、それは視野においておられますか。

自民党政治を変える中身を野党間でも議論していきたい

 志位 いますぐそういう条件、あるいは目標にできるだけのものがあるわけではありません。参議院選挙は直接それ(その結果)で政権が動くわけではありませんから、参議院選挙でそういう問題が問われるわけではない。参議院選挙ではやっぱり、(自民党)政治を変える中身そのものを野党間でもおおいに議論していきたいと思います。

 その先の総選挙という局面になって、その選挙の結果で政権党がかりに過半数をとれないという事態になった、そういう状況が生まれた場合の対応としては、私どもは以前から、私たちの政権の目標は民主連合政権だけれども、それにいたる過程でそういう状況がかりに生まれて、そして自民党政治の現状を突破するよりましな一致点が明りょうに確認されて、そして共同の意思があれば共同の意思がなければこれはだめですけれど、綱領だとか党名だとかをハードルにしているようじゃだめですけれど、そういうことがあれば、政権協議ということは当然起こりうることだというのは前まえからの方針で、それは変わりありません。ただ、いまそれを目標にしたり、条件があったりということではないんです。

 今度の参議院選挙では、もちろん自公保に厳しい審判を下すのは大事なんだけれど、やはり政治の中身においてどういう党がのびればいちばん自民党政治を変える力になるか、ここが大事な点です。ここを訴えていきたいと思っています。

 峰久 どうもありがとうございました。