1997年12月2日「しんぶん赤旗」

衆院本会議 

志位書記局長の代表質問 

<志位書記局長への首相の答弁(要旨)


日本共産党の志位和夫書記局長が十二月一日の衆院本会議でおこなった代表質問はつぎのとおりです。


 私は、日本共産党を代表して、小渕首相に質問します。

小渕内閣の四カ月──実態経済と消費拡大のために何をやったか

個人消費、失業、倒産  最悪記録の更新がつづく

 まずはじめにただしたいのは、小渕内閣が、発足以来の四カ月間に、いったい何をやってきたのか、ということです。

 この四カ月間に、実体経済の悪化はいよいよ深刻となりました。経済の六割をしめる個人消費は、十一カ月連続で昨年を割り込み、統計史上最悪の連続マイナス記録を更新しつつあります。

 完全失業者数は二百九十万人、失業率は四・三%を記録し、これも統計史上最悪となりました。

 企業倒産も、ことしの倒産件数はすでに十月で一万六千五百二十七件におよび、戦後最悪の負債総額を記録した昨年の年間倒産件数を上回りました。

 どの指標をとっても、最悪記録の更新がつづいています。

やってきたことは60兆円の

銀行支援の枠組みづくりだけ

 日本列島が不況の苦しみにあえいでいるときに、首相がやってきたことは何か。大銀行の支援のために、六十兆円もの公的資金投入の枠組みをつくることに熱中する――これがすべてではありませんか。

 六十兆円といえば、消費税による年間税収約十二兆円を、まるまる五年分ものみこむ額となります。そんな途方もない巨額の資金を、バブルに踊った大銀行の不始末の穴埋めや、大銀行が国際舞台にのりだすうえでの体力の増強のために使うなど、とうてい国民の理解をえられるものではありません。

 小渕首相は、七月に自民党総裁選に立候補するさいの政見で、つぎのようにのべていました。「(経済再建にあたって)決して間違ってはならないのは不良債権を処理したからと言って、実体経済が良くなる訳ではないことであります。私は、このことを肝に銘じ、実体経済を良くするために、全知全能を傾けて参ります」。それからすでに四カ月あまりが経過しました。

 総理、うかがいますが、あなたはこの間、「実体経済を良くする」ために、どういう「全知全能」を傾けてきたのですか。とくに戦後最悪にまで落ち込んでいる家計消費を温めるために、何をやってきたのですか。まずはっきりとお答えねがいたい。

「緊急経済対策」は、景気回復に役立つか

 それでは、小渕内閣がいますすめようとしている「緊急経済対策」は、景気回復に役立つものでしょうか。どの世論調査でも、国民の多くは、この「対策」が景気回復に役立つとは考えていません。最近の朝日新聞の調査でも、「緊急経済対策」に「期待が持てる」と答えたのはわずかに一一%、「期待が持てない」と答えたのが七六%に達しました。それは、この「対策」が、規模こそ二十四兆円と巨額ながら、冷え込んでいる家計消費を直接温めるための施策が、まったく盛り込まれていないからであります。

公共投資積みまし景気対策に

役立たず、地方財政危機を加速

 第一に、この「対策」の中心は、またもや従来型の公共投資の積みましです。しかし、景気対策として公共投資を積みますやり方は、当初は一定の効果があっても、中長期的には膨大な財政赤字をつくり、経済にマイナスに働くとして、政府も一度はみずから否定した、いわば”禁じ手”の対策のはずです。そのことは、九五年、九六年の財政制度審議会の報告でも明記されていることではありませんか。

 実際、宮沢内閣から橋本内閣までの七年間に、七回にわたって、減税をのぞいた事業規模で総額七十兆円もの景気対策がおこなわれ、そのうち実に八割の五十六兆円が公共投資に使われましたが、景気回復につながりませんでした。

 ことし四月におこなわれた十六兆円をこえる「総合経済対策」も公共投資中心でしたが、「これで経済成長率を二%おしあげる」という当初の政府の宣伝とは裏腹に、今年度の経済成長見通しはマイナス一・八%と修正されました。

 総理、政府みずからがいったんは”禁じ手”とし、景気回復に役立たないことが現実でも証明されている愚策を、どうしてくりかえすのですか。ゼネコンへの救済策としか、説明がつかないではありませんか。

 しかも重大なことは、公共投資積みまし政策に、地方自治体を動員してきたことが、自治体財政の危機を加速させていることです。この七年間で、全国の自治体の借金は七十兆円から百六十兆円へと二倍以上にふくらみました。

 全国いたるところで、借金の急増を理由に、福祉・教育など住民サービス切り捨てがすすめられ、ここでも景気を冷え込ませる悪循環をつくっています。総理は、公共事業中心の景気対策が、地方自治体の借金急増の大きな要因になったという事実を認めますか。政府の責任をどう認識していますか。これ以上の自治体への借金のおしつけは中止すべきだと考えますが、いかがですか。

6兆3千億円の「減税」──大金持ちと大企業への減税、

8〜9割の庶民には増税

 第二に、「緊急対策」にもりこまれている六兆三千億円の「減税」はどうでしょうか。政府は、所得税・住民税で四兆円の「減税」をおこなうとしていますが、この「減税」は最高税率の引き下げと定率減税をくみあわせ、今年の特別減税をうちきる代わりにおこなわれるために、減税になるのはひとにぎりの高額所得者だけで、納税者の八〜九割は、今年にくらべて来年は増税になってしまいます。

 先の国会の予算委員会で、私がこのことを事実をしめしてただしたのにたいして、総理はそれを否定できませんでした。

 最近になって、政府税制調査会の加藤会長は、「年収七百万円以下の人が特別減税時より増税になる」と明言しました。

 総理も同じ認識ですか。違うというのなら、いったい国民のどれだけの部分が増税になるのですか。国民の多数が増税になるとしたら、不況にさらに逆風をふきつけるだけではありませんか。答弁を求めるものであります。

 二兆三千億円の法人税の引き下げも、大きな問題です。中小企業への軽減税率の拡充は必要ですが、一律の法人税引き下げをおこなっても、消費大不況のもとで設備投資にはむかわず、景気対策としての効果は期待できません。

 政府は「国際水準なみに引き下げる」といいますが、これも根拠がありません。たしかに日本の法人税は、表面税率では欧米諸国にくらべて高いが、欧米にはない引当金や準備金などの税のがれの制度によって課税ベースが著しく狭いために、実質の法人税負担率では、日本が高いという根拠はないことは、政府も認めたことです。

 それならば、いったいなんのための法人税減税か。どさくさまぎれの不公正きわまる大企業優遇策としか、これも説明がつかないではありませんか。

商品券まじめな景気対策でなく、

党利党略の産物のそしりまぬがれない

 第三は、「地域振興券」と銘うった商品券ですが、実施前からこんなに評判の悪い対策はありません。どの世論調査でも国民の六〜七割が反対の声をあげています。総理は、この構想が、国民のかくも大きな反発をまねいているのは、どうしてだと考えますか。

 この構想は、公明が提案したはじめの案でも、景気対策としての効果が期待できないことは、広く指摘されていました。商品券が消費に使われたとしても、それによって浮いた現金から貯蓄にまわるだけだからです。それを配布対象を限定したために、いよいよ景気対策としての意味はなくなりました。

 それでは、いったいなんのための商品券か。総理は「個人消費の喚起と地域経済の活性化のため」といいますが、この目的が後からとってつけたものであることは、商品券構想をきめたときに宮沢蔵相が「これから意義づけを考える」と正直にのべていることでも明らかです。

 政策を決めてから、その目的を考えるというのは、本末転倒だと思いませんか。これでは、この構想が、まじめな景気対策でなく、党利党略の産物だというそしりは免れないと思いますがどうですか。総理の見解を問うものであります。

消費税減税をタブーにせず、正面から検討を

家計消費を温め、中小企業を助ける対策を――日本共産党の「緊急要求」

 景気回復のためには、このような方向違いの対策は役に立ちません。景気回復のためには、国内総生産の六割をしめる家計消費を温め、日本経済の土台をささえている中小企業を助ける対策に、本気になってとりくむ必要があります。日本共産党は、先日、つぎの六つの柱からなる「国民生活防衛の緊急要求」を提案しました。

 第一に、消費税をただちに三%にもどし、二兆円規模の庶民に手厚い所得減税とあわせて、七兆円規模の減税を実行すること。

 第二に、医療と年金で当面四兆円の国民負担の軽減をはかるとともに、公共事業や高薬価の浪費構造にメスをいれて財源をつくりだし、将来が安心できる社会保障制度をつくること。

 第三に、中小企業への貸し渋りをやめさせるための実効ある行政指導をおこなうとともに、中小企業むけ官公需を増やすなど仕事を保障すること。

 第四に、雇用不安を解消するために、一方的解雇の規制、労働時間の短縮による雇用の拡大、失業保険の拡充をはかること。

 第五に、農家経営をまもるために、暴落した米価の補てん、強制減反の中止をおこない、災害被害対策を強化すること。

 第六に、地方財政の危機を打開し、住民の暮らしをまもるために、地方交付税の引き上げなどの緊急措置をおこなうことであります。

消費税減税が実行に移されれば、

家計消費を温める衝撃的な経済効果をうむ

 このなかでも、私がここで総理にとくにただしたいことは、消費税減税についてであります。わが党は、今年の通常国会でも、先の臨時国会でも、橋本政権が九七年におこなった消費税増税など九兆円の国民負担増こそ、今日の景気悪化の最大の原因であることを明らかにし、消費税廃止を大目標としてあくまでめざしつつ、緊急の景気対策として消費税を三%にもどすことを強く求めてきました。

 そして、国会論戦のなかで、消費税減税が、(1)消費拡大に直結した減税であること(2)すべての所得階層に減税効果がおよび、とくに消費の落ち込みのはげしい低所得層を潤す減税であること(3)価格に転嫁できず身銭を切って税金を納めている中小企業の苦境を救うこと(4)落ち込みの激しい民間住宅建設を活発化すること――などを明らかにし、この政策が実行にうつされるなら、冷え込んだ家計消費を温める衝撃的な経済効果をうむことを、しめしてきました。

 これにたいする政府側の答弁の特徴は、消費税減税が景気対策として役にたたないという正面からの反論はなかった、できなかったということです。

 そこで総理にあらためてうかがいたい。消費税減税が、緊急の景気対策として、とくに冷えきった個人消費を活発化させる対策として、それ自体として効果をもつということを認めますか。それを否定しないというのであれば、この対策をタブーにせず、真剣な検討の俎上(そじょう)にのせるべきだと考えますがどうですか。

「将来の税制のあり方に反する」──国民は増税路線に信任をあたえていない

 ここで私は、これまで政府・自民党が、消費税減税を反対するさいに、その理由としてきたことにたいして、吟味を加えてみたいと思います。

 その一つは、消費税減税は、「将来の税制のあり方に反する」「いったん下げたら、上げることが難しい」ということです。しかし、「将来の税制のあり方」として、消費税の税率をさらに引き上げていくということは、自民党の方針かもしれないが、そんなことに国民は一度も賛成した覚えはないのであります。

 だいたい、消費税率を五%に引き上げることにたいしても、国民は一度も信任をあたえていません。九六年の総選挙では、当選した衆院議員のうち三分の二は、消費税増税に「反対」、「凍結」、「条件つき」の公約をかかげました。この公約に忠実なら、そもそも増税はできませんでした。ことしの参院選では、自民党は歴史的な敗北を喫しましたが、これは不況のさなかに消費税増税をおしつけた経済失政への不信任の結果ではありませんか。

 そこで総理にうかがいますが、五%への消費税増税に、国民はいったいどの選挙で信任の意思表示をしましたか。ましてや将来、五%以上に消費税を増税していくなどという方向にたいして、国民がいつ賛成の意思表示をしましたか。

 政府・自民党が、消費税増税という方針を勝手にもっているからといって、それを理由に、国民多数が切望し、もっとも効果のある景気対策である消費税減税を拒否するというのは、みずからの党略的立場を、国民の利益の上におくものではありませんか。

「高齢化社会をささえる税制」──なぜ消費税か根拠は一つもない

 いま一つ、政府・自民党は、消費税減税に反対する理由として、「消費税は少子・高齢化社会の進展という構造変化に税制面から対応するもの」という議論を呪文(じゅもん)のようにくりかえしています。しかし、なぜ高齢化社会をささえる税制の中心に消費税をすえる必要があるのか。国民に納得のいく説明はなんらされていないのです。私は、総理に、三つの問題について、端的にただしたいと思います。

一人の働き手が、一人の働いていない人を

ささえる姿は、将来も変わらない

 第一に、政府の推計でも、日本の総人口にしめる労働力人口の割合は、一九九七年が五三・八%であるのにたいして、高齢化社会のピークになる二〇二五年が五一・八%とほとんど変化はありません。高齢者人口は増えますが子どもの人口が減ること、高齢者や女性の職場進出が進むことなどにより、社会全体でみますと、一人の働き手が、一人の働いていない人をささえるという姿は、現在も、将来も変わらないのです。

 労働力人口の割合が変わらないのに、税制だけを消費税中心に変える必要がどこにあるのですか。直接税中心、総合・累進、生計費非課税という、戦後税制の三つの民主的原則を投げ捨てる理由はどこにもないし、この原則にたった税制改革こそ必要だと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

”みんなでささえる”といいながら、

大企業だけは負担しない不公正

 第二に、政府はよく”高齢化社会をみんなでささえなければならない、それが消費税だ”といいますが、消費税を負担しているのはだれか。価格に転嫁できず身銭を切って税金を納めている中小業者の方がた、そして転嫁しようのない最終消費者です。重大なことは、価格にすべて転嫁できる力をもつ大企業は、消費税を一円も負担していないということです。

 ”高齢化社会をみんなでささえる”といいますが、大企業だけは”みんな”に入らないことを、不公正と考えませんか。”みんなでささえる”というなら、大企業優遇の不公平税制こそただし、もうけ相応の負担を求めるべきではありませんか。

孫子の世代にばく大な借金を残す

放漫財政に、大胆なメスをいれよ

 第三に、政府は、”高齢化社会のため”といいながら、孫子の世代にばく大な借金を残す放漫財政をつづけているではないか、ということであります。

 六十兆円もの公的資金を大銀行に用意した国は世界にありません。

 年間五十兆円もの税金を公共事業につぎこみ、これから先も十三年間で合計六百三十兆円もの税金を公共事業につぎこむ計画をたてている国も世界にありません。

 年間五兆円の軍事費は、汚職による水増し分もふくめ、アメリカにつぐ世界第二の規模にまでふくれあがり、アジアでは日本につぐ、韓国、台湾、インド、中国の四つの国と地域の軍事費を合計した額に匹敵しています。

 二十一世紀にむけて、ほんとうに高齢化社会をささえる財政について心配するなら、これらの国政上の浪費構造にこそ、大胆にメスを入れるべきではありませんか。

浪費構造は、政・官・財癒着の構造と

一体企業献金禁止など抜本措置を

 重大なことは、こうした浪費構造は、政・官・財癒着の構造と一体だということです。ゼネコンや大銀行をめぐる腐敗の根には、自民党への政治献金がありました。防衛庁を舞台とした汚職事件の根にも、自民党中島洋次郎議員への贈収賄疑惑、軍事産業からの自民党への政治献金があったことが、明るみにだされています。真相の徹底究明とともに、企業献金禁止など腐敗の根をたつための抜本的措置をとるべきではありませんか。

「福祉目的税」

――消費税率の自動的引き上げのレールを敷くもの

 自民党と自由党の政権連立の合意のなかで、消費税の「福祉目的税」化の方向が合意されたことも重大です。これは、「福祉のため」だといってはてしない消費税増税を選ぶのか、それとも福祉水準の切り下げを選ぶのかという、選択しようのない二者択一に国民を追い込み、結局は消費税率の自動的引き上げのレールを敷くことになるものです。将来的に、税率をいっそう引き上げていくというのが、首相の考えですか。有害無益なこの構想を、きっぱり撤回することを強く求めるものです。

国民多数の声にこたえた経済政策こそ、政治への信頼高める

 いくつかの角度から吟味してきましたが、私は、政府・自民党が消費税減税に反対するさいにもちだしてきた理由には、ひとかけらの道理も根拠もないと考えます。

 同時に、将来どういう税制、財政をめざすかは、政党間にもさまざまな立場があり、国民の間にもさまざまな意見があることも事実であります。

 いま何より大切なことは、戦後最悪の大不況という緊急事態のもとで、将来の税制像、財政像に違いがあっても、それを消費税減税を拒否する理由にしてはならないということではないでしょうか。

 不況打開のために消費税減税がもっとも効果のある措置ならば、まずそれに大胆にとりくみ、二十一世紀の税制と財政のあり方については、国民的討論をつくし、選挙による審判をへて決定していくというのが、もっとも道理のある道筋ではないでしょうか。

 日本世論調査会の調査では、消費税の「引き下げ」ないし「廃止」をのぞむ声は七九%をしめました。この声に正面からこたえた政策を実行することこそ、国の経済政策への信頼を回復するもっともたしかな道であり、そうしてこそ景気回復への道は開かれます。首相が、そうした立場から、この問題を真剣に検討することを、重ねて求めるものであります。

 日本共産党は、志を同じくする他会派の議員とともに、この国会の冒頭に、消費税減税法案を提出しました。各党、各議員のみなさんの、ご賛同を心から訴えるものであります。

ガイドライン問題・憲法問題を問う

 安保・外交にすすみます。首相は、さきの日米首脳会談で、ガイドライン関連立法の早期成立を、アメリカに約束しました。

 ガイドラインとは、米軍が日本を拠点にして世界に出撃するときに、その戦争に自動的に参戦していくしくみです。

 しかし総理、そもそも、今日の世界のなかで、平和のための共同でなく、軍事行動のための新たな共同のしくみをつくろうとしている国が、ほかにありますか。軍事行動での共同が日米関係の中心になるのは、異常きわまることだと考えませんか。

ガイドラインの構想

──解決しがたい三つの矛盾をつく

 ガイドラインの構想は、日本とアジアの平和に逆行する、解決しがたい矛盾をはらんでいます。一つは、ガイドラインの発動の範囲が、事実上無制限、無限定であるということです。この矛盾が、集中的にあらわれるのは台湾問題です。

 さきの日中両国政府の首脳会談で合意された「日中共同宣言」では、日本側が「一つの中国」の立場を尊重することを、あらためて表明しました。

 「一つの中国」という立場にたつならば、台湾をガイドラインの発動対象から除外しないことが、中国にたいする内政干渉となるという認識が総理にはありますか。安保条約の対象範囲からも、ガイドラインの発動範囲からも、台湾を除外するという立場を、この機会に明りょうにすべきではありませんか。答弁を求めます。

 二つは、米軍に自衛隊が協力するさい、その協力の内容が戦争行為そのものであるということです。政府は、輸送、補給、通信などの活動は、「武力行使と一体でないから問題ない」としていますが、これらの兵站(へいたん)活動は国際司法裁判所でも「武力の行使」とみなされているものではありませんか。相手国から敵対行為として攻撃対象とされないという保障はどこにあるのですか。答弁を求めます。

 三つは、自衛隊の出動が、国会の承認すらへずに、自動的におこなわれるしくみとなっていることです。現行法では、自衛隊の防衛出動でさえ国会の承認を必要としているのに、日本が武力攻撃をうけていないもとでの米軍への参戦を、国会の承認すら求めないで政府の独断でおこなうことが、どうして許されるでしょうか。こうしたやり方は、国民主権と議会制民主主義を正面から否定するものではありませんか。

 日本共産党は、矛盾にみち、破たんが明りょうになっている、ガイドライン関連法案を、ただちに撤回することを、つよく要求するものであります。

武力行使をともなう

国連軍への参加を方針とするつもりか

 憲法問題にかかわって、自民党と自由党との政権合意のなかで「国連総会または安全保障理事会で国連平和活動に関する決議が行われた場合には、国連の要請に従い、その活動に参加する」とのべられているのは重大であります。

 これは、国連が決定すれば、武力行使をともなう活動であっても、日本が参加することを意味しているのですか。

 そうだとすれば、「武力行使を伴う国連軍への参加は憲法上許されない」とした、従来の政府見解をもくつがえすものとなります。憲法の平和原則をそこまで崩すつもりですか。総理の答弁を求めるものであります。

議員定数削減の動きに反する──政党助成法こそ撤廃を

 自民党と自由党の政権合意のなかで、「衆院、参院とも、当面、議員定数を五〇ずつ削減することを目標にする」ことが明記されたことは、わが国の民主主義の前途にとって、看過できない重大な問題であります。

議員定数削減に根拠はない

小選挙区の害悪をいっそう拡大するもの

 だいたい、わが国の国会議員の定数を削らなければならないという根拠はどこにあるのですか。国民百万人あたりの各国の国会議員の数を日本は衆院、他国は下院でくらべてみると、イギリス十一人、フランス十人、ドイツ八人、イタリア十一人、日本は四人です。日本が多すぎるということはいえません。

 国会議員は、国民の声を国政にとどけるパイプであり、そのパイプが細ければ細いほうがいいという主張は、議会制民主主義を否定することにつながるものではありませんか。

 しかも”議員定数を減らすならまず比例代表を削れ”という声が、自民党首脳のなかからおこっていることは、きわめて重大です。

 現行の小選挙区比例代表並立制は、大政党有利に民意をゆがめる反民主的制度です。さきの総選挙では、自民党は、小選挙区制部分では、三八%の得票率しかないのに五六%もの議席占有率をえました。

 比例代表を削減することは、小選挙区制のそうした害悪をいっそう拡大し、国民の少数の支持しかないのに、自民党とそれに連合する政党の絶対多数の政権がつづくことを、制度化するものではありませんか。日本共産党は、民主主義に逆行する議員定数削減の動きにつよく反対するものです。

「政治が身を削る」というなら

政党助成金制度こそ撤廃を

 「政治がまず身を削る」というのなら、政党助成金の制度こそ撤廃すべきであります。かりに衆院と参院で五十人ずつ議員を削減しても、年間予算の削減額はわずか七十二億円です。一方、政党助成金は年間三百十四億円にものぼります。

 憲法に保障された国民の思想・信条の自由をふみにじり、自民党中島洋次郎議員の事件がしめすように、いまや政治腐敗の一つの元凶となりつつある政党助成金こそ、撤廃すべきであります。総理の答弁を求めます。

すみやかな解散・総選挙を要求する

 最後に、私は、首相に、解散・総選挙への決断を求めるものであります。そもそも小渕政権は、参院選で自民党が国民の四人に一人の支持しかえられなかった状況のもとで、民意にさからって成立した政権です。その後のどの世論調査をみても、支持率は一〜二割台、不支持率は過半数をこえています。

 国民的な存立基盤がもともとない自民党政権が、当面の国会内の数合わせで自由党との連立を組んだことは、国民の政治への信頼を、さらに大きく傷つけています。

 こういう無原則、無節操な延命の道をずるずるとつづけるのではなく、二十一世紀を前に日本が進むべき道を国民に問うために、すみやかに国会解散・総選挙をおこなうことをつよく要求して、私の質問を終わります。

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志位書記局長への首相の答弁(要旨)

 志位書記局長の代表質問にたいする小渕首相の答弁の要旨は次の通りです。

 一、(実体経済をよくするための取り組みについて)総合経済対策の実施、金融機能再生法と金融機能早期健全化法を車の両輪とする法的枠組みに加え、総事業費十七兆円を超える緊急経済対策をまとめた。これらにより、不況の輪を断ち切り、平成十一年度にははっきりしたプラス成長に転換させ、平成十二年度までに経済再生をはかるよう内閣の命運をかけて全力を尽くす。

 一、(家計消費拡大のために何をしてきたか)とくに税制では平成十一年から四兆円規模の恒久的減税をすることにしたが、これらが家計等のマインドの喚起に役立っていると考えている。

 一、(公共事業の積み増しについて)緊急経済対策では社会資本の整備について、景気回復への即効性、民間投資の誘発効果、地域の雇用の安定的確保の観点から、情報通信、科学技術、環境、福祉、医療、教育の分野に大胆に重点化している。

 一、(地方財政の借入金について)地方財政は、数次の景気対策のための特別減税や公共事業追加等により借入金が急増し、きわめて厳しい状況にあると認識している。まずは景気回復に全力をつくすことが必要だと考えている。

 一、(公共事業の積み増しによる地方団体への借金の押しつけについて)補正予算にともなう地方負担分については支障が生じないよう適切に対処している。

 一、(個人所得課税の減税について)来年から恒久減税をすることにより減税額が減少する所得階層が生じるが、今年の一年限りの特別減税と単純に比較はできない。

 一、(法人課税の見直しについて)わが国企業が国際社会で十分競争力が発揮できるようにするとの観点から、実効税率を国際水準並みに引き下げる趣旨のものだ。

 一、(地域振興券について)消費拡大の効果があると考えている。

 一、(消費税減税について)税・財政のあり方を考えた時、消費税率引き下げは困難だ。

 一、(消費税五%引き上げへの国民の意思表示)自民党としては「子どもや孫の世代にこれ以上ツケをまわしてよいのか」などと、消費税率引き上げの必要性を訴えた。その結果、国民のみなさまの理解が深まったものと考える。

 一、(税制を消費税中心に変える必要性)所得課税を税制の中心にすえつつ、消費課税にウエートをやや移している。

 一、(大企業優遇の税制)法人の税負担の公平の確保については、今後ともいっそうの努力を続けていく。

 一、(財政の浪費構造について)今回の補正予算では、二十一世紀を見据えた、真に必要な分野に大胆に重点化している。防衛関係費については、装備品の調達価格の抑制につとめる等、あらゆる経費について合理化、効率化をはかっていく必要があると考えている。

 一、(防衛庁の汚職事件について)装備品調達について、調達機構、制度の抜本的改革に全力で取り組む。事件の真相については、今後公判等で明らかにされると考えている。

 一、(企業・団体献金について)平成六年の政治改革における政治資金規正法の「改正」により規制が強化された。まず各党、各会派において十分ご議論いただく問題と考えている。

 一、(将来の消費税率引き上げについて)社会、経済構造の変化や、財政状況などをふまえ、国民的議論によって検討されるべき課題だ。

 一、(消費税の「福祉目的税」化)少子高齢化の進展にともない、増大する年金、医療、介護等福祉のための財源を国民にどのようにお願いするかは、重要な検討課題だと認識している。

 一、(ガイドラインについて)指針の目的は、平素および緊急事態に際し、より効果的で信頼性のある日米協力の堅固な基礎を構築することだ。対米協力をおこなうかいなかは、国益確保の観点から、わが国が主体的に判断するので、自動参戦という指摘はあたらない。

 一、(ガイドライン、安保条約と台湾の関係について)周辺事態は、地理的概念ではなく、事態の性質に着目した概念だ。日中共同声明を堅持するとともに、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを希望する。

 一、(自衛隊の協力と武力行使の関係について)国際司法裁判所の判決は、外国国内の反政府勢力にたいする支援の法的評価をおこなったもので、指針の後方地域支援とは同列に論じられない。

 国連憲章、日米安保条約にしたがって行動する米軍にたいしておこなうわが国の協力は、国際法の基本原則に合致し、他国のわが国への武力の行使は国際法上正当化されることはない。

 一、(国会承認について)「周辺事態」への対応は、かならずしも国会の承認を得る必要はない。

 一、(安全保障問題での自由党との合意について)憲法の理念にもとづき、両党間で十分議論していきたい。

 一、(国会議員の定数削減の根拠について)政治も効率的な体制をめざすべきではないかという世論が存在する。

 一、(比例代表定数の削減について)両党間の協議において議論されることになると認識している。

 一、(政党助成金制度の廃止について)政党の政治活動の経費を国民全体で負担していただくものであり、民主主義の発展に重要な意義をもつ制度。政党交付金については、政党助成法の趣旨を踏まえ、適切に使用されることを期待している。

 一、(解散・総選挙について)まったく念頭にない。



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