地震から国民の命守るため政治の流れの転換を
衆院予算委員会 志位書記局長が総括質問

95年1月27日


志位委員 私は、日本共産党を代表して、村山首相並びに関係閣僚に質問いたします。
 阪神大震災は、亡くなった方が五千人を超える戦後最悪の震災となりました。私は、犠牲になられた方々への深い哀悼の気持ちとともに、苦しみに耐え、頑張っておられる多くの被災者の方々に心からのお見舞いを申し上げたいと思います。
 政府がまず何よりも優先させるべきことが救援と復興であることは、これは言うまでもございません。この問題については、昨日の集中審議で我が党の穀田議員が、現地の被災者の方々の切々たる声に基づいて政府の姿勢をただしました。この災害の甚大な規模にふさわしく、それから地震災害で経済的な被害を受けた方々に対しては国が責任を持って補償するということも含めて、ぜひ救援と復興に全力を尽くしていただきたいと、強く最初に要望しておきます。
 まず私が聞きたいのは、震災問題についての首相の基本姿勢についてであります。
 多くの国民は今、一刻も早い救援、復興ということとともに、どうしてあのような甚大な災害が起こったのか、そこに政治の責任はなかったのかという思いを持っております。
 本会議の代表質問で我が党の不破委員長は、日本共産党が十四年前に震災対策として、地震に強い都市・国土づくり、消防消火力の抜本的強化、それから観測・予知体制の拡充という問題を提起したことに触れて、この三つの角度に照らして、この十四年間の歴代政府が対策を余りになおざりにしてきたことを具体的に指摘して、総理に国として必要な備えがなかった責任をどう考えるのかということをただしました。ところが、総理の答弁は、国としてこの問題についてはやるべきことはやってきた、これから強めるということで、行政の最高責任者としての反省の言葉が聞かれなかったのは残念でした。胸の痛みが伝わってこなかったのは残念でした。
 やはりこれだけの甚大な被害を出しているわけですから、私、この点は、これから復興をどうするか、救援をどうするか、防災都市という問題をどうするかを考える上でも基本だと思うんです。
 災害対策基本法は第三条で、国は「組織及び機能のすべてをあげて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する。」「すべてをあげて」と、こう言っているわけですから、私は、行政の責任者として反省の言葉がまずあってしかるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

村山内閣総理大臣 言われるまでもなく、今回のこの地震で五千人を超すとうとい命をなくした、同時に三十万近い避難生活をされている方がおられる、その現地の実情を考えた場合に、これはもう言葉では言い尽くせない、本当に重く受けとめた気持ちでこれからの対応を考えていく必要があるというふうな気持ちについては、これは率直に私は申し上げておきたいと思うのです。
 それで結果から見れば、昨日のこの委員会でもいろいろ意見もございましたし、指摘される点もございましたけれども、問題点はたくさんあろうかと思います。これは、何といってもやはり一遍にあちこちで火災が多発すると、消防車が行くにもなかなか交通渋滞で行けないとか、あるいはまた水道管が破裂して消火栓が使えなくなって水が出ないとか、もう初期の段階でいろいろな困難があった。その困難の中でも、何よりも大事なことは人命救助だ、同時に消火に全力を挙げてほしいということを私は本当に訴えて、要請もしてまいりました。
 しかし、今申し上げましたような現状もあって、なかなか思うに任せず、結果的に本当に残念なことになってしまったわけでありますけれども、これはやはり行政を担当する責任者として、本当に申しわけない結果になったということは、もう言いあらわせないぐらいの気持ちで今おるところでございます。それだけに、今後の救援なり復旧なり復興というものは、全力を挙げて取り組まなければならぬと考えていまするし、同時にまた、こ
の貴重な教訓を今後の防災対策、地震対策に生かしていかなければならぬということを肝に銘じておる次第であります。

志位委員 検討していきたいというお答えでしたので、ぜひ前向きの方向で検討をお願いしたいと思うのです。
 いま一つは、消防車の問題なのです。これが足らなかった。それで今回の震災でも、消防車と救急車を同時に動かす要員の数が足らなくて大変だったということも伝えられました。これは国に基準が置いてありますね。これはよく御存じだと思いますが、消防力の基準があります。この基準は、消防に必要な最小限度の施設及び人員について定める、最小限度という基準なのですね。

 ところが、この最小限度というみずから決めた基準に照らしまして現状を見てみますと、充足率で見まして全国平均で、消防ポンプ自動車が八八・七%、小型動力ポンプが七五・一%、はしご自動車が六三・八%、化学消防ポンプ自動車が五九・九%、そしてそういう車両に対する必要な消防職員の充足率が七〇・六%。
つまり、きちんと定員どおり車両に配備したら三割の車は動かせないという状況になるわけですね。そして、この充足率は八一年当時七七・九%でしたから、逆に下がっているのですよ、この職員の充足率は、車両に対しては。
 ですから、やはりここも逆向きの政治になっているというふうに私は考えるわけで、ぜひこれは、消防については首相は努力を図ってきたとおっしゃいましたけれども、みずから決めた基準ですから、これは一〇〇%で当たり前なんです、最小限なんですから。ですから、これは直ちに改善を図っていただきたい。これはぜひお願いしたい。

野中国務大臣 委員が御指摘になりましたように、現在の車両及び消防職員の充足率を私ども決して満足すべきものでないと承知をしておるわけでございます。ただ、最近救急自動車に対するニーズがふえてまいりましたために、救急自動童につきましては九九・六%と、それぞれ地方公共団体が救急自動車に重点を置いてきたというのが委員が御指摘になったような結果になるわけでございまして、今後この車両の整備あるいは人員の配置等について、財政的支援をも含めて配慮してまいりたいと考えております。

志位委員 ぜひこれも、財政的支援を含めてということをおっしゃいましたから、自治体任せにせずお願いしたい。
 それでこの点でも、消防庁の予算を見ますと、自治体に対する補助金が最高時の八一年度に比べて、こう若干のこれはありますけれども、八四%に落ち込んでいますから、予算措置をきちんとやっていただきたい。
この消防、消火という問題は、やはり大きな手落ちがあったことがはっきりしたわけですから、ぜひそういう点で本当に命を大事にするという政治をお願いしたいと思うのですね。
 第二の問題は、地震に強い都市づくりという問題なんですが、今度の地震では高速道の落下、それから新幹線の落橋ですね、それから地下鉄がつぶれる、こういうことが相次ぎました。政府が関東大地震でも大丈夫と言ってきた重要な公共建造物が次々破壊されました。押しつぶされて少なくない方が亡くなられたわけですね。地震の時間がもう少しずれたらもっと大変な大惨事になった。私は、この点で、安全神話の崩壊ということが言われますが、政府の姿勢におごりと過信があったんじゃないかと言わざるを得ないんですよ。
 都市型の直下型の地震で高速道が落ちるというのは、今回が初めてじゃない。八九年のサンフランシスコ地震、九四年のロサンゼルス地震、相次いで起こったわけですね。そのたびに調査団を出しているわけですが、これはサンフランシスコ地震のときの調査団の記録ですが、これを見ますと、「日本における橋梁の設計等に反映させる点は認められない。」一切教訓はないんだ、簡単に言えば、ということを言っております。我が党も国会で質問しましたが、日本の橋梁というのは極めて安全ということで、そういう答弁でした。これと同程度の地震が起こっても大丈夫だ、これはサンフランシスコ地震のときもロサンゼルス地震のときもそういう態度だったわけです。私は、やはりそういう点では、率直に言っておごりと過信があったということを厳しく反省する必要があるんじゃないかと言わざるを得ないんですが、いかがでしょうか。

野坂国務大臣 お答えします。
 本会議でも全く同じような御質問がございまして、橋梁が落下したのはそういう意味があるではないか。建設省といたしましては、御指摘がありましたように、関東大震災や新潟地震、こういうものの結果を受けて、漸次それに合わせつつ直してきた、そういう経過があります。
 しかし、御指摘がありましたように、現実に落下をしたわけですから、落橋したわけでありますから、これについて十八日からその内容について詳しく調査をしております。したがいまして、その調査の結果に基づいて耐震学界の皆さん、橋梁学界の皆さん、こういう方々にお集まりをちょうだいして既に委員会をつくっておりますが、十分にその原因を調査をして、万全の対応策を考えていかなければならぬ、そういうふうに考えております。
 我々内部で話し合っておりますのは、これは学問的ではありませんが、今までは水平でやってきた、今度は鉛直の地震であった、こういうものから考えて、縦と横と振れたという関係から、今までの地震に対する対応策というものがその辺に問題点があったのではなかろうかな、こういうふうにも思っておりますが、いずれにいたしましても、原因を徹底究明をいたしまして、それに対する対応策をつくり、御期待に沿うようにしなげればならぬ、こういうふうに考えております。

志位委員 建設省の報告書が一月二十三日に出ているんですが、これを読みますと、今度の震災は予想を超えるものだったということが出ています。よくこの言葉は政府関係者から出るんですね、先ほども閣僚でおっしゃった方がいたけれども。しかし、この言葉を使ってほしくないんですよ。
 というのは、このサンフランシスコ地震の政府の記録、これを見ますと、サンフランシスコ地震というのは最大の水平震度で一・〇Gを記録しているんですよ。九百八十ガルですよ、大体。それから、ロサンゼルスは一・八二Gを記録しているんですよ。これはもう千八百ガルです。ですから、アメリカの二つの地震というのは今度の地震以上の揺れだったんですね。縦揺れ、横揺れという話もされましたけれども、ロサンゼルスの記録を見ますと、縦揺れの方が横揺れよりはるかに大きかったということも政府の報告書にちゃんと出ていますよ。全部政府は知っての上でのことなんですね。予想もしなかったということにはならないんです、これは。
 これは非常に大事な点で、大きな直下型地震が起きれば八百ガルあるいは千ガル、震度で言えば七以上ですね。これはみんな七以上ですけれども、の地震が起きるというのは、これはよく知ったはずのことであって、よく知っていながら、この二つの地震の後、日本は大丈夫、こう言っておいて、そして今度は、落ちれば、予想もしなかった。これは一体どういうことですか。やはりこれは反省が足らないと思うのですよ。やはりきちんとそういうことを反省しないと、今後この問題を本当の意味で前向きに打開していくことにならない。
 それからもう一つ、この建設省の報告書で私が読んで驚いたのは、関東大地震の二倍だという報告なんです、これは。そうなっているのですよ。今度の神戸、兵庫の大震災の最大地盤加速度は六百から八百ガル、関東大地震は三百から四百ガル。つまり、関東大地震というのは震度六以内の地震だった、今度は二倍の揺れだ、こういう報告を出したわけですよ。
 これを出しますと、全部新聞がそれを書きました。これはもう関東大地震の二倍を超す揺れ、こう言いますと、これを見た方は、これはもうしょうがない天災だ、とても予想がつかなかったと皆思いますよ。しかし、関東大地震が震度六以下だった、三百から四百ガルしか最大なかったというのは、一体どういう根拠に基づいて言っているのですか。建設大臣、どういう根拠があるのですか、これは。

野坂国務大臣 お答えいたします。
 志位委員が御指摘のように、今まで私どもは過去の地震というものを十分に調査をして、その時々に従って整備をし、さらに現在点検をし、整備をしておるさなかであったわけでありますけれども、震度が六ということではなしに、マグニチュードは七・二でありましたけれども、震度は七であったわけです。予想以上の大きな大惨事を起こしたわけですけれども……

志位委員 関東大地震の震度が六以内だというのはどの根拠ですか、根拠。

野坂国務大臣 私どもはそういうふうに聞いておりますけれども……。

志位委員 聞いておるだけじゃ困る。根拠を聞いているんです。

野坂国務大臣 その内容については事務局に答弁させます。

佐藤委員長 国土庁防災局長。時間がありませんから、簡単に。

志位委員 ちょっと委員長、いいです、時間ないから。
 根拠ないんですよ。これは建設大臣、もういいです。指名しているんですから、あなたいいです。根拠ないんです。
 一つは、私がきょう持ってきたのは、建設省建築研究所応用地震学室長の石橋克彦さんという方が書いた「大地動乱の時代」、建設省の専門家ですよ、あなたのところの専門家が書かれている。これを見ますと、こう書かれています。「しばしば「大正関東地震にも耐えられる」という言葉を聞くが、これは無責任な言い方である。なぜならば、当時は地震学も地震工学も未熟で観測も非常に不完全であり、震源で何がおこって地表でどんな地震動が生じたかという関東地震の全貌を私たちはまだ知らないからである。」当時の記録を見ますと、地震計はみんな振り切れているんですよ。ですから、最大水平震度が幾らかということは、これははっきりは全貌はわからない、こう建設省の専門家が言っているわけですね。そして、これに耐えられるというのは無責任だと。
 ただ、私調べておりましたら、家屋の倒壊状況については綿密な調査を文部省がやっています。その文部省の調査によりますと、家屋倒壊率五〇%以上の地域が広範にありますよ。だから、震度七以上の地震だったということは、もうこれは歴史の事実なんです。
 これは「日本被害地震総覧」というものですけれども、これを見ますと、やはり家屋の倒壊状況が詳しく書かれておりまして、推定の最大震度は重力加速度の六〇%、〇・六G、大体六百ガルですよ。神戸と同じもの、なんです。こういう地震だったんです。これは日本の地震の基本資料ですよ。
 ですから、二倍なんというのは、本当にこれは何の根拠もないことを流している。二倍と聞けば、これは天災だ、仕方がない、こうだれでも思いますよ。しかし、そうじゃないのです。ロサンゼルスの地震もサンフランシスコの地震も関東大震災も、やはり今度のこの阪神大震災と大体同規模のものが起こっているんですよ、現に。それを私は、何というのかな、予想できなかった、仕方がないんだということで済まされないと思うのですね。
 これは本当にそういう点では、私は予想できなかったんじゃなくて、予想していながら、ちゃんとこういう報告書があるのですから、知っていながら対策をとらなかったという問題がやはりあるわけですから、総理、これそうなんですよ。ですから、そこをきちっとぜひ踏まえて対応していただきたい。この政府の報告書の結果に基づいてきちんとした対応がこのときとられていれば、やはり災害の拡大を防げたと思うのですね。
 そういうことをやることが政治の役目なんですよ。それを、自分たちがつくった安全神話が崩れると、関東大震災の二倍だ、こういう根拠のないことを流しているというのはやはりよくない。こういう姿勢はフェアじゃない。きちんとした、まさに真摯な態度で原因の究明をちゃんとやり、そして政治の責任をきちんと感じて、災害復興もやるし、救援の子もしっかり差し伸べるし、防災都市のために力を尽くすというのが政治の役割じゃありませんか。これは総理、どうですか。総理大臣、総理大臣。

佐藤委員長 建設省藤川道路局長。
 簡単に答えてください。

藤川政府委員 今のお話でございますが、私ども橋のいろいろな耐震設計の際に考えております地震の力、地震の力というか地震動ですね、それを関東大震災では三百ないし四百ガル程度であっただろうという推計、当時は確かに観測技術等が発達しておりませんので、当時の被災状況、墓石が例えばどういう形で壊れているとか、そういう被災状況から推計したものが三百ないし四百ガルというふうに聞いておりまして、それをベースにして私ども耐震設計をやってきたということでございまして、だから、三百ガル、四百ガルというのは私どもの耐震設計のベースとして考えていた地震動だということでございます。
 今回の地震の力の実際に観測されたデータは六百ないし八百ガルということでございまして、私どもとしては、やはり今回観測されたこういうデータをベースにして、なぜ、どういうふうに被災されたかというのを徹底的に究明したい、そういうふうに考えているところでございます。

志位委員 要するに、関東大震災のこの問題について、三百、四百ガルだったということを勝手に、官僚の方が勝手にそう考えていただけであって、私は幾つかの具体的な資料を示して、そんなものじゃなかった、この権威ある地震の基本資料だって推定六百ガルぐらいの数字を出しているわけですから、そんなものじゃなかった、それをきちんと反省しなきゃだめだということを言っているわけですよ。
 官僚というのはこうなんですよ、総理。自分たちがつくった安全神話が崩れると、またこうやって保身をするわけです。こういうことを繰り返していたら、もう本当にだめですわ。ですから、本当に総理の姿勢として、やはりそういう点をきちんと踏まえて、これから耐震基準見直すでしょう、耐震基準見直す際に、私は、震度七をひとつ想定に置いてほしい。いいですか、震度七。少なくとも重要な公共建造物、新幹線、鉄道、高速道路、病院、学校、高層ビル、こういうものはぜひこの震度七を基準にした耐震設計の見直しをぜひお願いしたい。
 そういう点では今の基準というのは、建物の設計水平震度というのがありますね、大体〇・二から〇・三ですよ。ガルに直せば二、三百ガルの対応しかできない。震度でいえば大体震度五までの対応しかできないんですよ、今の耐震基準というのは、鉄道でも、道路でも。ですから、これはやはり、少なくともそういう大事なものですね、大事な公共建造物については震度七でも耐え得るという方向で、耐震設計の見直しをやる際にはぜひそういう検討をお願いしたい。いかがですか。

亀井国務大臣 志位委員からの御質疑の中で、関東大震災、ロス、サンフランシスコの地震と今回の地震等については、私は素人でございますから、気象庁長官という専門家にどうであったかということを今から答えさせます。

二宮政府委員 ただいま震度についての御質問がございました。
 気象庁で発表しております震度は現在七でございますけれども、気象庁で発表いたします震度七というものは、昭和二十四年か五年がちょっと忘れておりますが、福井地震以後、震度七ということが出てまいりました。関東大震災の当時は、震度階は六まででございました。

志位委員 二十数分じゃ済まないというふうに私は伺ったのですが、七時に通報があった、こう聞いたんですが、二十数分というのは間違いないんですか。はっきりしないわけだから、七時と私は聞きました、気象庁の担当の方に。これ、間違いないんですか。

二宮政府委員 私、先ほど知っていたはずでございますけれども、ただいまちょっとメモを持ってまいりませんでしたので、申しわけございません。

志位委員 そのくらいのことはちゃんと調べておいてほしいんですね、特別のことじゃないんですから。それで、七時なんですよ、洲本の測候所からその震度の通報があったのは。地震発生から一時間十四分たった時点での通報なんですね。
 なぜそうなったかといいますと、洲本の測候所というのは夜間無人化になっているのですよ。夜間、人がいないんです。ですから、地震が起こったときは、もう早朝ですから人がいないわけですよ。ですから、慌てて職員の方が駆けつけて、行ってみたら、さっき言ったように地震計が壊れている。それから、NTTの専用回線は切れている。仕方がないからVHFの無線を使って、そして大阪に連絡をとった。それが七時ですよ。だから、洲本からの情報が入ったのはそうだと聞いております。
 それで、やはりこの無人化という問題ですね。これは非常に大きな問題で、全国九十七測候所があるんですが、八〇年代以降の臨調行革のもとでどんどん人減らしがここで進みました。その結果、今九十七ある測候所で夜間無人化が三十四ですよ。ことしさらに八つやるというのです。夜間無人化というのは、午後五時から次の日の朝の八時半まで、人がいないんですから。十五時間半人がいないんですから、これはもう大変な空白になるわけです。
 やはり私は、そういうことが災害の第一報のおくれにつながっている、これは明白な事実ですから。これは数字は、気象庁長官、はっきりわからないのだったら後できちっとしていただきたいけれども、おくれたことは事実ですから、そして人減らしがこうやってやられているということは、やはり一番の災害情報センターを失うことになるわけですから、総理、これはそういう測候所の人減らしはやるべきじゃないと私は思いますが、いかがですか。

亀井国務大臣 今の委員の御質問の中で、ちょっと誤った点があるから私の方から申し上げます。
 洲本の測候所は、御指摘のように地震計自体が壊れてしまいましたので、所員が体感の結果、報告をいたしております。これはちょっと時間がおくれております、御承知のように。NTTの回線も切れておりますから。
神戸海洋気象台につきましては、これはNTTの回線が壊れまして、これで連絡がつきません。そこで六時六分です、これは。七時じゃありません、六時六分に。はい、そうです、そういう形で、他の震度計等は自動的に全部作動して、きちっと報告いたしております。

志位委員 やはり機械は壊れるのですよ、地震になると。今言ったように洲本の回線も切れたわけでしょう、大臣。神戸の回線も切れたわけだ。だから最初、洲本と神戸の震度が入らないのですよ。でも、神戸と洲本というのは一番の震源でしょう。だから、周りの情報からしか最初は入ってこないのですよ、第一報として。
一番の震源地が一体震度幾らなのかということがおくれるのですよ。無人化になればさらにこれはおくれるのですよ、いないのですから、体制が。
 で、地震のたびに、専用回線が切れて通報がおくれるということが繰り返されております。例えば、昨年の北海道東方沖地震、このときも専用回線が切れまして、職員が体感震度をやはり電話で報告したのです。今回の地震でも、さっき言ったように専用回線が切れる。
 ですから、機械の地震計、計測震度計をふやすということは結構ですよ。大いにふやしていただきたい。しかし、最終的に地震の際に震度を伝えているのはマンパワーなんですよ。人間が最後は体感も含めて、おっしゃったように震度を見て、そしてそれを伝えるわけですね。これがおくれればやはり初動のおくれになるわけです。震度が穴なのか七なのかあるいは五なのか、それを正確にまずつかむことによってそれへの対応が全部決まるわけでしょう。本当に甚大な災害だということが瞬時につかめたら、それこそ広域的な消防態勢を一気にとるとか、そういう問題が生まれてぐるわけですよ。
 ところが、あなたが言ったように一番の中心の洲本、神戸で専用回線が切れちゃうわけですから。洲本では無人化ですよ。洲本市での測候所の問題は、淡路島に一市十町の自治体がありますが、この無人化のときに全部反対の意見書を上げています、全島を挙げて無人化にしないでくれと。これが淡路島の声だったのです。それを無人化をどんどん進めて、ともかく機械があればいいだろうと。これは間違っていますよ。やはりこれは見直すべきだ。大臣、いかがですか。

二宮政府委員 今御指摘のありましたように、今回確かに神戸の回線の断がございました。それからまた、洲本の震度計の故障がございました。しかしながら、現在のところ、その他のところではすべて震度計の状況は入ってございます。そのために、むしろ緊急に、非常に急を要する震度のデータあるいは災害に直結するような自然現象のデータを非常に速やかに収集し、国民の皆様にお知らせしあるいは他の防災官庁にお知らせするためには、いわば機械のオートメーションという方式が一番確実だというふうに考えております。
 しかし現在、おっしゃいましたように故障がございました。これは技術的にそういうことがないように、これから技術の高度化を検討させていただきたいというふうに思っております。

亀井国務大臣 このたびの経験、反省を踏まえて測候体制の強化をいたしたい、政府といたしましても、補正予算も考えておるわけでありますから、あらゆる面におきまして全力を挙げて取り組みたいと思っております。

志位委員 測候体制の強化という答弁がありましたから、ぜひそういう方向で、今までの人減らしの方向を見直していただきたいと本当に思います。
 それで、もちろん予知の問題、観測の問題は本格的な体制が必要なわけで、観測強化地域あるいは特定観測地域でも東海地域以外は本当に空白ですから、そういうことの体制もぜひ強める必要がありますし、それから活断層の調査なども、東京直下の活断層などは三千メートルの沖積層があってまだ未発見のものもありますから、ぜひこういう点での調査も必要だ。あらゆる点で、これは観測、予知の体制というのは、未来の世代に対してやはり我々が本当に今ある科学技術の最善を尽くしてそれこそとっていくべき体制ですから、それも含めて強く要求しておきたいと思います。
 さて、私、時間があと十分になったのですが、三つの角度から震災問題を見てまいりました。やはり率直に申し上げまして、国民の命を地震災害から守るという大問題に政治の光が当たっていないのじゃないか。やはり今度の地震災害というのは、単なる天災ではなくて、政治の責任が深く問われている、ぜひこのことを自覚して、今後の対応に当たってほしいと思うのです。
 そして、光が当たっていないという、この光を当てるためには、私は今度の予算案を見ましても、予算の流れを変える必要がある、このことを最後に言いたいと思うのです。
 例えば軍事費はその一つです。これはもう一枚パネルをつくってまいりましたが、これは一九八〇年から九四年までの軍事費と震災対策あるいは防災対策、消防施設設備整備補助金の経年の変化です。この軍事費は、大体一九八〇年に比べて二一〇%、四兆七千億円、巨額です。そして、一般会計の伸び率は一七一%になっているのですが、この震災対策の予算は一五三%、防災対策関係予算は一二七%、消防関係は八四%。これはみんな一般会計の伸び率以下なんですよ。防衛費は本当に突出している。
 この問題は、やはり考えてみるべき大きな問題があるわけで、我々地震列島に住んでいるわけで、地震列島における政府の役割というのは、地震災害から国民の命を守るというのは、これはそれこそ大きな、最大の安全保障の一つと言っていいでしょう。
 それで、一方が、軍事費がこうやって聖域にして突出するんだが、一方は一般会計の伸び率以下に全部抑え込まれている。やはりこれは、今見直すべき一つの政治のゆがみじゃないでしょうか。総理、いかがでしょう。

村山内閣総理大臣 これは先ほども申し上げましたように、国民の生命、身体、財産を守るというのは国の基本でございます。その基本に立って、今回のこの地震の大惨事というものの教訓というものはやはり重く受けとめて、そして地震に強い、災害に強い、そういう防災対策というものをやはり確立していくという意味では十分検討されなければならない課題だというふうに思っております。

志位委員 私、この軍事費という問題を考える場合、首相は抑制されたというふうに言うのですけれども、九四年度予算に比べて〇・八六%伸ばしているわけですよ。やはり、予算を削ったというんだったら抑制という言葉を使ってもいいと思いますけれども、予算を伸ばしながら抑制と言うのは、これは成り立たない。
 しかも、中身の中で、戦車、戦闘機、護衛艦、そういう正面装備の新規契約が合計八千二百五十億円ですよ。そのうち九七・七%がわずかの頭金だけで、あとは後年度払いというツケ払いになっている。
 一つだけ総理に具体的にちょっと伺いたいことがあるのですが、そういう軍事費、軍事費がまさに浪費的なやり方で支出されているというところに私は問題があると思う。例えば、来年度予算では九〇式戦車を新しく二十両買うというのですね。一両約十億円ですから、二百億円の買い物ですよ。頭金ゼロで、すべてツケ払いですよ。
 総理は三軍の最高司令官でしょう。ですから、そういう点で私は、この最新鋭の九〇式戦車を新たに二十両も買い入れなければならない理由は何なのか、一体どういうことに使うのか、どういう具体的事態を想定し、どういう具体的使い道がこの最新鋭の戦車にあるのか、これは最高司令官としての御見解を菊聞かせください。

玉沢国務大臣 正確を期すために申し上げますが、軍事費ではございませんで、防衛費であります。なおかつ、これは我が国の安全保障に資するものでございまして、その点を明確に委員に申し上げておきたいと思います。
 また、戦車を二十両、こういうことでございますが、あくまでも我が国に対して直接侵略また間接侵略、これに対処するために購入するものであります。

志位委員 私たちは軍事費だ、憲法九条に反する違憲の軍隊の軍事費だというふうに認識しております。そして、私が聞いたのは、何に使うかということなんですよ、戦車を。直接及び間接侵略に使うと言うけれども、どういう事態を想定しているのか。
 これは、私きょう持ってきたのは十一月二十九日付の社会新報です。総理が委員長を務められる社会党の新聞ですよ。これは去年の十一月ですから、総理がもう総理になっておられた後の新聞です。
 そこの三面を見ますと、「こうすれば軍縮実現できる」、こうあるんです。「硬直化した防衛費」「頭金ゼロで巨額兵器買い込む」「増え続けるツケ払い」、こういうことで今の軍拡の実態を批判していますよ。なかなかこれは的確です。ところがこれを、この硬直化した事態をあなたがやっていらっしゃるんですから、これはちょっとどうかと思うんですね。
 私、この記事の中でなかなか興味を持って読んだのは、竹岡勝美さんという元防衛庁官房長が「防衛費は減らせる」という提言をやっている。そして「戦車千二百両まず削る」とあるんですよ。そしてこうおっしゃっています。「すぐ手を付けるべきは千二百両もある戦車だ。陸上自衛隊のシナリオは、上陸してきた敵戦車を戦車で迎え撃つというもの。しかし、沖縄戦を見れば明らかなように、敵が上陸してくる時は、制空権を握り、徹底的な爆撃の後だ。」と言うのです。つまり、日本が焼け野原になった後に戦車がやってくる。そして、こう言っています。「工業化され、原発が四十八基もある日本で、そういう戦争はもうできないということを、政治は判断すべき」ではないか。このとおりですよ。
 これは、あなたの党の新聞で公表されている一つの見解で、私、非常に興味深く読んだ。ですから、これはどうですか総理、戦車は何に使うんですか、戦車。総理の党との関係がありますから、どうぞ。

玉沢国務大臣 東西冷戦構造ということが崩壊をした、こう口では簡単に言いますが、これは極めて長い間の戦後の年月を経て、大変緊張しながら、この間において我が国の防衛というものを守ってきたわけであります。つまり、我々は日米安保体制のもとに、このソ連を中心とする共産主義政権が、共産主義陣営ですよ、世界を軍事的な力によって征服しようとする、こういう世界戦略というものがあって、それに対しまして我々は、自由主義諸国がそれぞれの自由と独立を守るという形でやってきたんです。
 日本の中におきましては、例えば北海道の防衛等におきましては非常に大きな潜在的な脅威があった。例えばソ連がこの世界戦略を展開をする場合におきまして……(志位委員「答弁になっていない。戦車の使い道を聞いているんですよ」と呼ぶ)極東の海軍が北海道の周辺でありますところの宗谷海峡、津軽海峡を通過しまして、世界的な作戦を展開する、そういう場合におきまして、もし第三次世界大戦があったとすれば、当然我が国の北海道に対して彼らは侵略をしてくるという可能性があった。そういう、それに対抗するためにこの戦車等が必要であった。
 また、東西冷戦構造が自由主義陣営の勝利によって終結をいたしたわけでございますけれども、まだこの世界情勢におきましては、世界大の戦争というものは想定されないことになりましたけれども、いまだに不安定な状況にあるという、そういう認識がありまして、地域的な紛争、民族的な対立、そういうような対立というものがあって、不透明、不安定な状況にあるということはよく御承知のとおりであります。

佐藤委員長 志位和夫君。

玉沢国務大臣 そういう中におきまして……

志位委員 もう結構です。もういいですよ。指名があったんだから、もう結構です。

玉沢国務大臣 世界の紛争というものはふえておるわけでありますから、我が国の周辺を防衛をするために必要である……

佐藤委員長 玉沢防衛庁長官、時間が迫っておりますので……。

玉沢国務大臣 こういう認識のもとで話をしておるわけであります。
 以上であります。

志位委員 いろいろ言いましたけれども、結局、何のために使うか何にも示してないですよ。ソ連の脅威が云々と言ったけれども、そのソ連はなくなったじゃないですか。そのソ連はもちろん、そういう事態になっているわけですよ。
 それで、私は、第三次世界大戦ということもおっしゃいましたけれども、前、万々々が一ということを言ったこともありましたよ。軍事費となれば、何に使うか定かでないようなものを、それこそ惰性的に軍需産業をもうけさせるためかどうかわかりませんが、買い込む。しかし、本当に国民の命を守るための防災、震災対策、そういうものには金を出し惜しむというのは、これは政治のゆがみ以外の何物でもない。例えば九〇式戦車一つとっても、いいですか、一台これ約十億円でしょう。さっきの耐震防火水槽にすれば、一台で二百二十六基補助金ではつくれますよ。二十台削れば四千五百二十基つくれる。この二十二年間つくってきた耐震防火水槽を全部合わしても四千二百十二基ですから、その戦車二十台削っただけでも一気に防火水槽の整備は進むんですよ。
 ですから、私はそういう点で、今こそ軍事費を大幅に削って、震災の救援と復興、そして防災都市づくり、国民の福祉と暮らしに充てるべきだということを要求いたしまして、私の質問を終わります。答弁は要りません。
(拍手)




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